私は蘭裕園で山本社長にお世話になった事があるが、そこには元ホームレスも一人働いていた。小野瀬さんは、箪笥職人をしていたが会社が倒産、以来幕張の海岸で魚を釣って食べて暮らすホームレス暮らしだった。生活保護を受けるのは申し訳無いから、と思ったらしい。山本さんが幕張に釣りに行った時に、小野瀬さんを気に入って蘭裕園に住み込みで働く事になった。山本社長曰く、“小野瀬さんはたくましい”。私が見た時、小野瀬さんが来た初めは非常に人との接触が固く心が閉じている風で、それが印象的だった。私もその現象が経験上、分かるのである。何か大きな、時にショックな事を経験した後、人から見ると心が閉じたような、拒絶的で寄せ付けないような硬い印象がある。

(しかし、私は、その後山本社長の元で明るくなった小野瀬さんが本当にそれでよかったのかには疑問があるが。)

この元ホームレスとも作業の合間などに色々話して面白かった。しかし、小野瀬さんはホームレスで、私は後から障害年金を貰う身になった。そしてディオゲネスはホームレスである。だから私は障害年金を貰っていていいのかまだ考えきれていない。キュニコス派たるもの、障害年金を貰っていていいのだろうか。荘子はどうもホームレスではなさそうなのでそのへんは一縷の望みがあるが、よりキュニコス派や荘子らしくありたい、らしさを追求したいと私は思っている。障害年金をもらう経験は荘子やキュニコス派の思想にどう活かせるんだろうか。