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⇀紀伊国屋書店の前でらもさんがいるのが見えた。僕はみつからないように後ろから近づき、いきなりらもさんを背後からはがいじめにして、緊張感に満ちた声で言った。
「中島、逮捕」「抵抗するな」「中島、再逮捕」「再逮捕だ」。何人かいるように見せかけるため、声色や声の位置も変えた。
3秒ほどはがいじめにしていると、らもさんの足がフラッときて、体がグラッと崩れそうになった。これ以上続けるのは危ない。体より精神的にパニクッて、奇声を発したり暴れだしたりするかもしれない。
実はらもさんは発見された大麻以外に、ほかのところにも隠してあって、それは捜索でもでてこなかったと後になって話してくれた。
僕にはがいじめにされながら、らもさんは「あれも見つかってしもたか」とか、「あの拘置所生活もう一回やるのか」「執行猶予どうなるんやろ」「今度は実刑だな」とか、わずか3秒の間にさまざまなことがフラッシュバックして頭を駆けめぐったに違いない。再逮捕というのはそれほど衝撃的なことなのである。
「どうでした、らもさん、びっくりしました?」、そう言いながら顔を覗き込んだが、らもさんはまったく無表情で、何も言おうとはしなかった。しかし、死ぬ数年前のらもさんはあまりにもビッグで、いたずらとはいえそんなことをする奴は、まず、いなかった。油断があったに違いない。だからよけいに不意を突かれたはずなのだ。
もし死ぬ前に何かひとつだけらもさんに聞くことが許されたとしたら、
「あのとき、本当はものすごパニクッったやろ」、と聞いてみたかった。
らもさん、僕は本当のことが聞きたい!頭が変になるほどパニクッたんでしょう?そして、結構おもしろかったでしょう?


作家の中島らもさんも普通に大麻所持で逮捕されている真人間です。逮捕されているからおかしな人間だとかクズだとは言えない場合があると分かります。逮捕されていない犯罪者じゃない人間のクズ、五万といますよ。