勝ったのは、そこそこ有名どころの外国人レスラー。で、負けたのは中年…待てよ、あの歳だと初老って呼んだ方がいいのかなあ。とにかく、いぶし銀のおっさんでさ。昔はメジャー団体に在籍してたんだけど、今はフリーでやってる選手なんだよね。で、その人が負けたの。うん、スリーカウントで。ま、順調な結果ではあるよね。
でも…なんだかおかしいんだよ。
だってさ。
勝ったはずの選手が怪我してるんだもの。
クリーナー
掃除屋
プロレス始末伝
黒木あるじ
本当にヤバイ奴はメインイベントでは無く、常に第3、第4試合辺りの前座で試合をしているのだが、道場破りや調子に乗って言うことを聞かなくなった選手、手の付けられない外人選手など、団体にとっての面倒ごとが起こった際、彼らは試合の最中、観客に気付かれないよう密かにヤキを入れ事態の沈静化を図っているという。
ポリスマン、ガードマン、バウンサー、もしくはクリーナーなど、様々な隠語をもって語られる彼らに共通しているのは、メインで黄色い声援を浴びているスター選手のような華やかさは無いものの、地味ながらも確かなテクニックで口うるさい常連客を満足させ、ときにコミカルな試合などもこなしながらも、いざとなれば真っ先に矢面に立ち防波堤のような役割を担う。
今回のお目当ては、もしかするとそんな裏の顔を隠し持っているのでは? という幻想を抱かせる。
独特な雰囲気を纏ったいぶし銀レスラー、幻の人間風車二世・クラッシャー高橋。
カード発表当初、第1試合の対戦カードはクラッシャー高橋vs.Xとなっており、もしかすると『あんなんだったら俺だって勝てる』と豪語していた血気盛んな若造・ナイフボーイが喧嘩を売り、その制裁の為に雇われた掃除屋なのでは? なんてことを考えていた。
そうなると当然ながら誰にも見向きもされない最下層などと、好き勝手にぬかしてる私までもが制裁の対象になっている可能性も決して低くは無く、試合中の事故に見せ掛けて始末されることも覚悟していた。
しかし、何気に壁に貼られた本日の対戦カードに目を遣った瞬間、それらすべてが杞憂だったことが分かり安堵する。
浅草のおじいちゃんvs.クラッシャー高橋
(おじいちゃん)vs.(プロレス)ってジャンル分けはなんだか理解不能だが、取り敢えずこれを見た瞬間、私は察してしまった。
1回戦の対戦相手はナイフボーイでは無く前回大会で死んだはずのザビエルに'キリスト式のザビエル固め'なる面妖な技で呪詛の呪いを両足に注入され、3日間両足が腐ってしまい最後は死に至ったという設定のおしょうさん。
なるほど、おしょうさんは前回死んじまったから、今回は浅草のおじいちゃんって名前に変えて出て来るってことだな!
ま、何にせよこれで一安心だ。
ナイフボーイが出ないんだったら、クラッシャー高橋がクリーナーって説も思い過ごしってことで問題無いだろう。
そんなことを考えていた矢先のこと。
でもこれには俺なりの計算が有ってさ、怪談をやってたら霊が降りてくるから冷えるんじゃないかと思ったんだけど、これがとんでもない計算違いでね…
おいおい、なんでジャックダニエルの前説やってるところに群馬みなかみが入ってくるんだよ?
オメェはこの後、第1試合に出るんだろ? 早くおじいちゃんの格好に着替えて来いよ!
あれ、そんな格好でレフリーやるの?
それってもしかすると、浅草のおじいちゃんってのはナイフボーイのリングネームだって可能性もまだ残されてるってことか?
完全に終わった。
私の頭の上に点灯する死亡フラグ。
朝倉未来に喧嘩を売った青汁王子は、完全にYouTube連動のやらせて企画だったが、やはりうちの白汁王子(セルフボーイ)は本気で喧嘩を売っていたのだろうか?








