先輩、渡邊龍太朗って知ってます? タッグマッチではあったんですけどね、アイツが鈴木秀樹に必死に喰い付いて行く必死な姿ってか、あの闘志が半端なくて、なんかもう、成田蓮を超える期待の若手なんじゃないかって思うんですよね。
コイツは、絶対に見とかないとダメですよ!
そういや 3.3の王子は、お前さん界隈の熱苦しい連中が集まって、随分と盛り上がったって話だね。
でも残念だけど、アンタ達の大好きな鈴木秀樹ってのには、そんなに興味が無いって前から言ってるだろ?
それからね、成田蓮を超える若手ってのはどういう了見だい? 成田は将来新日本プロレスを背負って立つ男だよ。
そんな何処の馬の骨だか分からねえ、どインディーの新人と一緒にして貰っちゃ困んだよ!
でも、ま〜アンタがそこまで言うなら一丁、その渡邊龍太朗とやらを観に行ってみようじゃねぇのよ。
で、いったい何処まで行きゃ〜いいのさ?
令和元年 6月8日 新木場
今日は第1試合ですけど鈴木秀樹が出ますから、生で観れば先輩の鈴木アレルギーも吹っ飛びますよ。
僕のオススメした船木戦とか、ちゃんとYouTube見て予習して来て貰えました?
いやいや馬鹿言ってんじゃないよ、だいたいプロレス観に行くのに、なんでいちいちYouTubeで予習しなきゃいけねんだよ?
レスラーってのは地方の会場回ってよ、ろくすっぽプロレス雑誌なんて読んだこともねぇような素人のオヤジ相手に『おいおい、なんだかスゲー奴が出て来やがったな、どうなってんだチキショウめ』って感じでよ、感心させてナンボの商売だろ?
ビル ロビンソンの弟子だからなんだ〜、キャッチレスリングのテクニックがどうのってよ、散々理屈コネて喜んでるようなよ、最初っから出来上がってるような観客相手にチヤホヤされてもさ、そんなのヲタクの中のチャンピオンでしか無いんじゃないの?
今日は予備知識無しでね、その鈴木とやらがどんだけの者だか確かめてやろうと思って、なんにも見ねえで来てやったよ。
相変わらずカビの生えたような古臭い屁理屈ぬかしますけど、やっぱりアレですか、『俺はもう三銃士辺りの時代からプロレスを見てるんだから、おメェ~らとは年季が違うんだよ』とか、なんだかよく分からないキャリア自慢しちゃうタイプですか?
三銃士の時代から? って、また人のことを年寄り扱いしやがって、嫌な感じだね〜
でもアレだ、俺がプロレス見始めたのは小学生の頃にブッチャーがシークと組んで、テリーとドリーをホークで滅多刺しにしてた時代だから、ま〜三銃士よりは、もうちょっとだけ前の時代になるだろうな。
婆さんがプロレスファンだったから、それ以前からも一緒に見てたんだろうけど、あの試合だけは強烈なトラウマとして鮮明に記憶に残ってるんだよな。
よく言う猪木世代って奴ですか? いつまで経っても昭和のプロレスが最高だったって、ぐだぐだ言ってるタイプの!
そうだな、自分では猪木世代だと思ってたんだけど、よくよく考えるとブッチャー、シークから入ってるんだから、ギリギリ、ジャイアント馬場の洗礼も受けてるんじゃ無いかと思うんだよね。
洗礼って、そんなの同じ昭和のレスラーなんだから、馬場だろうが猪木だろうがたいして変わんないでしょ?
いや、同じ昭和って言っても馬場と猪木のプロレスの世界観ってのはまったく別物なんだよ。
当然、馬場は四天王プロレスの頃まで生きていたんだけど、あの頃の全日と馬場がメイン張ってた頃の全日とはまた全然違う別モンなんだよな。
王道プロレスとストロングスタイルですね? 全日は受け身の練習から入って、新日は攻撃の練習をするって言いますよね。
いやいや、そんな屁理屈はプロレスヲタクが言うもんでさ、『いや〜やっぱり馬場のところの選手は受け身が上手だね、試合運びもそつが無くて安心して見てられるよ』なんて抜かしてる小学生が居たら気持ち悪いだろ?
単純に言っちゃうと、仮面ライダーとウルトラマンの違いみたいなもんだろうね。
アンタ達の喜んで言う、プロレスラーのナイフだなんだって発想はアントニオ猪木の世界観の中での話でさ、『プロレスは最強の格闘技である。道場で死ぬほど特訓してカール ゴッチ直伝のサブミッションを身に付けて、いざとなったら相手のケツの穴に指突っ込んだりとか、プロレス裏技まで伝授されてるからどこに行っても舐められない』みたいなね、殊更にアスリート的な強さを強調するんだけど、そんな理屈を突き進めて行くとUWFみたいになっちゃって、そんなこんなと言ってる内に段々と後に引けなくなって、気付いたら総合格闘技みたいな流れが出来上がっちゃったんだよ。
結局みんなして、その渦に飲み込まれて行っちゃうんだけどな。
それですよ! そのプロレスラーのナイフが一番大切なんですよ! レスラーに強さを求めないで何が楽しくてプロレス見てるんですか? って話なんですよ。
そのナイフナイフって強調されるのも、なんだかな〜って感じでさ、そもそもケツの穴に指突っ込むとか言ってる奴と同じリングに上がりたくないでしょう?
正直、俺なんかは後藤のヘッドバットみたいなのが一番好きなんだよな。そんなにカテェのが良いんだったら、ボクシングでも見れば良んじゃない? って思うんだよね。
今なんか、井上尚弥とかモンスターが出て来て盛り上がってるしさ、あのワンパンマンなんて本当のハードヒットじゃん?
後藤洋央紀のヘッドバットって、真空殺法じゃ無いですか! もう完全に舐め切ってますよね?
いやね、ここまで観に来てて言うのも何なんだけど、今どきUWFスタイルなんて言って需要があんのかな? って、正直疑問なんだよ。
俺なんかはUWF信者じゃなかったからそんな細かいことまでは分かんないけど、あの時代のプロレスファンってのは『プロレスって八百長じゃん、 何でそんなの喜んで見てるの?』って馬鹿にされ続けて、肩身の狭い思いをしてる部分があったんだよ。
そんな中UWFが出て来て『これまでのプロレスとは違うんだ!』『これでもう、ショーだとか八百長だとか言わせねぇぞ! 』って、そんなプロレスファンのコンプレックスを原動力に一大ブームを巻き起こしたような気がするんだよね。
あの時代はファンもレスラーも、どっかしらコンプレックスを抱えていたような…
でも昔はゴールデンで放送してたり、ドームツアーやったりとか、プロレスは今よりもずっとメジャースポーツだったんじゃ無いんですか?
そうね、ドーム興行を年5.6回やってた時期はもうゴールデンから深夜枠の放送に切り替わっていたんだけど、来年のドーム2連戦で大騒ぎしてる状況と比べれば随分と景気の良い時代ではあったんだけど、プロレスがメジャースポーツだったかと言えばどうなんだろうな?
ドーム興行って言っても、そんなもんジャイアンツは普通に毎日やってるわけでしょ? 相撲だって両国15連戦だしさ、本当のメジャースポーツと比べると市場規模は桁違いだし、この時代もプロレスファンってのはマイノリティだったよね。
それからゴールデンで放送していて、人の目に触れる機会が多かった分プロレスファンが多かったかって言うと、それ以上にプロレス嫌いの人も多かったって印象だよな。
特に俺より年上の世代、今でいう50代くらいの人達だな、今は余り見掛けなくなったけどSMSの書き込みなんかでプロレスに批判的なコメント入れて来る人がたまに居るでしょ、ああいうのを面と向かって言われてたんだよ。
今考えると、人の趣味に対していちいち目くじら立てて文句言うって何考えてんだ? って話なんだけど。
例えば旅行とかに行ってて、プロレスの放送時間だから見ようって言ったら、『こんなインチキ見るんじゃねぇ、どうしても見たかったらよその部屋に行って見ろ』みたいな感じでさ、何かプロレスに怨みでも有るのかしら? って感じでもの凄い喧嘩腰で拒絶反応を示してくんだよ。
なんだか、俺なんかより上のプロレス黄金時代を思いっきり享受してた世代の人に、アンチが多かったような気がするな。
きっとその人達も子供の頃はプロレスファンだったけど、段々と大人になるにつれて騙されてた! って感情とか芽生えて、反動で嫌いになったとかじゃないですかね?
それから年上の人ばっかりって、そりゃただ単に年下の人は遠慮して言えなかっただけじゃ無いですか?
いちばん頭に来たのはヒクソン戦の後だよ、
『ねぇねぇ、普段プロレスだったら関節技掛けられても、ずっと我慢してロープブレイクしたりするじゃない。なんで高田はあんなに慌ててタップしちゃったのかな? やっぱりプロレスとは違うのかね』って、アイツら絶対に『いや〜プロレスは八百長ですから』って言わせたくて聞いて来てるんだぜ、今思い出しても腹が立つ!
だからザックセイバーjr.みたいな、ストレッチ技を次々と繰り出すみたいな展開は楽しめるんだけど、ヒールホールドで延々と締め続けるとか、ああいう試合展開は苦手だね。
自分たちが怪我人続出して危険だからって禁止技にしといて、なんで今更つなぎ技で使ってんだよ? って思っちゃうんだよな。
あと格闘技系の人もプロレスのこと馬鹿にした発言をしますよね。『テンコジなんてロクな死に方しねぇ』とか?
あの時代はね、プロレスラーに憧れてたけど身体が小さくて諦めたとか、何とか入門はしたけど理不尽なシゴキとか暴力に耐えかねて逃げ出したとか、そんな人が格闘技に流れて名を上げて意趣返しなんてのも有ったんじゃ無いかな?
まだ企業のコンポライアンスなんて言葉も無かった時代だから、練習生が亡くなったりとかの事件も有ったくらいだし、かなり酷かったんだと思うだよね。
その点、格闘技のジムって入口が金払って通うお客様だから、そんな理不尽な上下関係が少ないんじゃない?
それと当然プロレスの仕組みがね… 一緒にするなって人も沢山居たんだろうけど、格闘家の中にもプロレスに対するコンプレックスを抱えた人も少なくは無かったじゃ無いかな?
考えてみると、ファンもレスラーも格闘家もみんな何かしらのコンプレックスを抱えてて、そんなコンプレックスの渦がUFCの出現に触発されちゃって、格闘技ブームに突き進んで行っちゃったんだろうな。
なんだか、コンプレックスだらけですね。
誰もかれもがコンプレックス抱えて嫌な時代だったとも言えるけど、そんな鬱憤したストレスが大政奉還みたいにプロレスと取って代わる、格闘技ブームの原動力になったんだと思うんだよね。
でもさ、いまどきのプロレスファンってのは…
いまどきってのは棚橋世代以降のことを言ってんだけど、プロレスと格闘技は別の物ですから! って前提で入って来てる訳だから、最初から何の負い目も無いし、プロレスファンであることのストレスなんて無いわけじゃん?
それは格闘技側にも言えることで、子供の頃にPRIDEとか見て最初から格闘家に憧れて入って来てるから、こっちもコンプレックスなんて無いんだよね。
あれから時間が経過してプロレスはプロレスとして、格闘技は格闘技として別々に進化の道を辿ったことで、どちらも随分と洗練されレベルも相当上がってさ、結構な盛り上がりは見せてるんだけど、それはあくまでも個人毎の成功であってさ、RIZINがPRIDEみたいなプロレスと取って代わるみたいな熱狂が生まれるとは考えられないよね、そこにコンプレックスは存在しないし、あの時代みたいにプロレス側がムキになって突っかかって行って踏み台にされることも無いだろうからね。
やっぱりアンタ、アレでしょ! 『プロレスが負けた〜』って、『もう、あの時代を思い出したくないから、新日のマットに格闘家を上げたりするな』って、事あるごとにヒステリックに騒ぎまくるタイプだよね。
散々プロレスラーが食い物にされちゃったもんだから負け癖が付いちゃって、開き直って『プロレスは最強じゃなくて良いんだよ。最高のプロレスを目指そう!』みたいな、悟りきったようなことを言うオッサンが居るけど、俺正直、ああいうの大っ嫌いなんですよね。
『プロレスラーは強くなくても良い』みたいな考え方。
だったら、プロレスなんて見ねぇで演劇でも観に行けって話ですよ!
確かにあの時代は格闘技の勢いに押されて、オマケに猪木までそれに乗っかっちゃっうもんだから、新日なんてのはスッチャカメッチャカになっちゃって、古い新日ファンの人の中にはいまだにトラウマだって言う人も少なくはないよね。
『散々プロレスラーが格闘技のリングで負けて暗黒期になっちゃったから、プロレスラーの強さから目を背けるようになっちゃったんでしょ?』って言いたいんだろうけど、あの時代にね、プロレスラーが負けた! っていうか、実際個々では負けた試合は有るけど、『プロレスが格闘技に負けた』とか、『プロレスラーが格闘家より弱い』とか、そんな感覚は少なくとも俺の中では無かったんだよね。
実際にプロレスラーが格闘技のリングで負けちゃったから、プロレスラーは弱いじゃん! って流で暗黒時代に向かって行ったんでしょ?
なんだろうね? 人によってはそんな風に捉えてたかもしれないけど、 暗黒期、暗黒期って、言うほど酷い物じゃ無かったって言うか、見ている方からすると、むしろアレは面白い時代だったんじゃないかな?
物差しが違うって言うのかな?
やっぱり、そこは馬場の洗礼を受けてる影響なんだろうな!
先輩、ソロソロ開場するみたいですね。中に入ましょう!
えっ? 今、話が…
かなり核心に触れそうなところじゃない?
そんなのどうでも良いですよ!
取り敢えず、中に入っちゃいましょうよ!
えっ、そうなの?
つづく


