東証によるIPO改革は数年前から段階的に行われてきたました。
主には、上場の際の公開価格の引き上げ。
ここではデータは拾いませんが、
過去には上場日、その翌日と値が付かず、
初値が公開価格の5倍以上という銘柄が年間数件あったりもしました。
それが今では、初日に値が付かないことがあっても年間数件程度。
これは公開価格を引き上げることによって、上場する企業が多くの資金を調達できるメリットがあります。
しかし投資する側からすれば、IPO銘柄を上場直前で入手する魅力が減ってしまいます。
そして2023年11月、IPOに関して新たに2つのルールが適用されました。
一つ目は上場日に幅を持たせるということ。
上場予定日が12月1日〜10日のいずれか、のように上場承認の段階で
上場日がはっきりしない銘柄がでてきました。
これは上場する企業にとって、相場環境が悪い中上場する事をさけるメリットがあり、
過去には相場環境の悪化を理由に上場を延期する企業がありました。その対策でしょう。
企業側、主幹事証券、東証にとってはメリットがありますが、
投資する側からすれば、
上場日ははっきり決めてもらったほうがいいのではないかと思います。
上場前にIPO銘柄を買えた投資家にとっては上場日が変動しても問題はないのかもしれませんが、
上場後に買うつもりの投資家にと言っては上場日が変動すると予定が立てにくいというデメリットがあります。
直前になって、上場日を再度確認しないといけませんしね。
以下、上場日が変動した銘柄の公開価格と初値です。4銘柄。
<上場日に幅を持たせた会社>
公開価格 初値
ジャパンアイウエア 1,360 1,271
ブルーイノベーション 1,584 2,023
ロココ 1,128 1,100
早稲田学習研究会 970 1,118
サンプルが少なく、また2銘柄は公開価格が仮条件を超えた銘柄でもあったため、結論は出せませんが、
4銘柄のうち2銘柄が公募割れしており、不調でした。
注記:実際には4銘柄とも幅を持たせたスケジュールの初日に上場しています。
二つ目のルール変更は、仮条件を超えて公開価格を設定できるようになった事です。
これは公開価格を実際の評価額に近づける事で多くの資金調達ができるようにするためですね。
企業にとっては多くの資金が調達できるようになる一方、投資家側にとっては公開前や公開直後に
買っても株価が急騰しにくいというデメリットにもなります。
以下、このルールで上場した4銘柄の想定価格、仮条件、公開価格、初値です。
<仮条件を超える価格で上場した銘柄>
想定価格 仮条件 公開価格 初値
ブルーイノベーション 1,220 1,220〜1320 1,584 2,023
雨風太陽 840 840〜870 1,044 1,320
ロココ 710 900〜940 1,128 1,100
ヒューマンテクノロジーズ 940 940〜1,020 1,224 1,194
仮条件を超えて公開価格を設定したのに2銘柄は初値が公募を割れる結果になりました。
他の2銘柄についても初値暴落率が+30%以下であり、グロース銘柄のIPOとしては
物足りない結果になりました。
注目したいのはロココ。
想定価格の710円の3割程度高い900〜940円に仮条件を設定し、
さらに仮条件上限の940円から2割高い1,128円を公開価格にしますが、
初値は公募割れの1,100円となりました。
こういうのを見ていると、投資家に高い買い物をさせているように思えてしまって、
バカにされているようにさえ思えてしまいます。
私は長くIPO投資に力を入れてきましたが、
今回のIPO改革は、投資家のIPO投資離れを助長するのではないかと危惧しております。
特にグロース銘柄は、多少ディスカウントされた公開価格に対して
過大な期待を背負って実力以上の初値で上場し、
その期待に応えながら成長、株価に実力が追いついてくるイメージが強かったのですが、
今後は多少高い公募価格に対してどう成長していくかになっていくでしょう。
もはや初値は関係ない。
そしてIPOがお祭りにはならない。
IPO銘柄の公募割れは当たり前になってくるでしょう。
さらに言えば、IPOする銘柄に注目するメリットが無くなった。
2024年は、今回変更になったルールを適用してくる銘柄が増えてくると思いますが、
それによって投資妙味がどうなるか、注目したいと思います。