お正月に、彼と箱根駅伝を見に行った。
本当は1月末に彼の出張に合わせて広島に行く予定だったのに急に出張がなくなって、その代わりのデートだった。
駅伝好きの彼からは「いつか一緒に駅伝を見てほしい」と付き合う時に言われていたけど、お正月の三が日に家庭のある者同士がデートするのは難しいだろうなと正直、思っていた。
でもね、色々とうまく整って行けちゃったんです笑。
横浜に泊まって往路復路と応援した後、横浜の中華街に向かった。
本当は前日のディナーを中華街でと話していたのに、まさかの雪が降ったのでホテル近くのお店で済ませた。充分、楽しかった!
結局のところ、普段は遠距離でめったに会えないので一緒に過ごすこと自体が目的で何をするとか食べるとか、どこでとかはどうでもよい。
とは言いつつ、横浜は特別な場所だったからどうしても二人で街を歩きたかった。
中華街に行く前に、山下公園に行った。
昨夜の雪が嘘みたいな青空で、1月なのにバラが咲いていて晴れやかな日だった。
33年前、私が大学を卒業する少し前の春休み。二人で横浜に行ったことがある。
どちらが言い出したのか、何をしたのかも覚えていないけど、大きな船の前でKくんが当時流行りのインスタントカメラで写真を撮ってくれたことだけ、ぼんやりと覚えている。
今回、二人で山下公園に来て、彼に手を引かれて海に張り出した細長い場所に来た瞬間、
「ここだ!」と思った。
33年前に私たちはここで氷川丸をバックに写真を撮ったんだった。そう思ったとたんに、Kくんに再会してからずっと探していたことがわかった気がした。なぜ、彼とこうなったのか。
もちろん、当時の記憶が蘇ったわけではない。それでも、心の奥で眠っていた感情のようなものが確かに私の中で動いた。
私はきっと昔も彼が好きだった。自分では認めなかったけど。
大学4年生になってようやく就職が決まった夏休み。帰省していた実家にKくんからお誕生日祝いのお花が届いた。たぶん、それが彼の気持ちを意識したきっかけだったと思う。
その頃から、Kくんは頻繁に電話をかけてきて、私たちは気づけば4時間とか!、おしゃべりをする仲になっていた。
きっと彼と話すのも一緒にいることも、今と同じですごく楽しかったのだと思う。だけど、私には地元に付き合っている彼がいた。Kくんもそれを知っていたから、最後まで私に好きとは言わなかった。
卒業を間近に控えて、地元に就職も決まって、家族と彼氏が待っていた。私はKくんに対する自分の気持ちを認めなかった。
「Kくんは私のことを好きみたいだけど、私には彼氏がいるから…。サークルの先輩と後輩として仲良くしてるだけだから。」
自分にそう言い聞かせて、私はそのまま卒業をした。就職して、当時の彼氏だった夫と結婚をして、いつしかその言い訳は、私の中で定着した。
それでも年賀状の季節になると、少しだけ心が戸惑った。何を書いていいのか。彼からの年賀状は何て書かれているのか…。結局、ありきたりのことしかお互い書いていないのに、それでも彼の年賀状を夫に見られるのはなんとなく抵抗感があった。
33年ぶりにあの風景に二人で身を置いた時、そんな長い間の呪縛が解けたみたいな気持ちになった。
私はやっと本心を取り戻した。
だから、今こうなったんだと。
あの時、どんな気持ちで私は横浜に行ったのか…。
卒業してしまえば、Kくんとこんな風に過ごすことは出来なくなる。早く離れて、ふらつく自分を抑えたい一方で、きっと私は彼と離れがたかった。
33年ぶりに二人で同じ景色を見て、神様の情けか、それともイタズラなのか、今になってこうなった二人の、あの頃の気持ちを思ったらどうしようもなく切なくなった。
未完の恋は、それからお互いの心の奥底で静かに鳴りを潜めて、終わることなくくすぶっていたらしい。思っていたよりずっと強く。
ようやくこの恋を理解できた気がしている。
