JR西日本はるかの課題 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
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そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。
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 関空アクセス鉄道における南海の課題が輸送力なら、JRが直面するのは「価格」に尽きると断言して差し支えないでしょう。

 JRの関西空港駅ー大阪駅間の営業キロは56.7km、運賃は関西空港線の加算額220円を含めて1,210円です。天王寺駅ー大阪駅間では「はるか」も関空快速も大阪環状線の西回り(11.0km)を経由しますが、運賃計算上はやや短い東回り(10.7km)を適用しています。

 これは改札内に複数のルートが存在する場合、どれを経由したのか正確には特定できず、営業キロを統一しておかないと運賃計算が極めて複雑になるからです。言い換えれば、なにわ筋線が開通して実キロが短縮されても、運賃計算キロは現状維持になるということです。

 

 逆に、なにわ筋線に新線加算運賃を適用することもできません。大阪駅の地下ホームと地上ホームを改札内で連絡したことは評価されるべきですが、その反面で運賃設定の自由度が失われたのも事実です。

 一方、南海はJRとのなにわ筋線共用区間が2.8km、単独区間が3.3km、新今宮駅ー関西空港駅間が41.4km、合計47.5kmです。南海の対キロ区間表に当てはめると790円、空港線の加算額230円を合わせると1,020円で、運賃だけでもJRより190円安くなります。これに現状の特急料金520円を含めても、1,540円に収まります。

 対する「はるか」の関西空港駅ー大阪駅間は自由席特急料金でも1,200円、運賃との合計額は2,410円です。「ラピート」との価格差は870円となり、勝負になりません。

 この問題に対処するには、まず南海側に譲歩を求めることが考えられます。南海の特急料金(指定席料金と同義)は必ずしも距離に比例して設定されているわけではなく、例えば和歌山港駅ー難波駅間67.0kmは520円ですが、極楽橋駅ー堺東間は53.5kmで790円です。

 関西空港駅ー南海新難波駅の運賃は現難波駅を基準に計算するのが望ましく、指定席料金も520円を維持するべきですが、その他のなにわ筋線各駅発着時は790円まで引き上げても良いのではないでしょうか。この場合、運賃との合計額は1,810円となります。なにわ筋線は運賃だけで建設費を償還するのが難しいので、料金を高めに設定することが経営上も得策です。

 ただ、それでもまだ600円の価格差が残ります。この対策として、拙著【関空アクセス鉄道の復興計画】では、「はるか」を全車座席指定の特別快速に格下げする案を示しました。これならば、運賃に加えて指定席料金530円(閑散期は330円)を徴収するだけなので、「ラピート」より安くすることが可能です。

 しかし、これは前述の「料金を高くして建設費を償還する」という趣旨に反します。さらに、もう一つの問題として指摘しなければならないのは、自由席がなくなってしまうことです。その詳細は次回に譲ります。

 

 

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