京阪の懸念材料 | 京阪大津線の復興研究所

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大津線とは、京阪の京津線と石山坂本線の総称です。
この大津線の活性化策を考えることが当ブログの目的です。
そのために、京阪線や他社の例も積極的に取り上げます。

それでもなお、烏丸線と東西線を京阪に託して本当に大丈夫か、という声が聞こえてきそうです。確かに、近鉄・JR西日本・阪急におのおの不安要素があるとはいえ、消去法的に京阪を選ぶだけでは説得力に欠けます。

 

加えて、他者から侵食され続けたのが京阪の戦後史なのも事実です。戦時中の強制合併を経て阪急から独立する際に新京阪線(現在の阪急京都本線・嵐山線・千里線)を奪われたのを皮切りに、奈良電気鉄道を近鉄に奪われ(現・近鉄京都線)、江若鉄道を国鉄に奪われ(現・JR湖西線)、京津線の収益区間を京都市交通局の東西線に奪われました。

 

要するに、京阪はこれまでに京都市内で取り上げた四つの鉄道事業者すべてに敗北しているのです。その後も、客観的に見て赤字になることが分かり切っていた中之島線の建設に心と資金を奪われ、阪神を傘下に収める千載一遇のチャンスを逃しています。経営手腕を疑問視されても仕方がありません。

 

このように、京阪は経営の入口、イニシャルコストの投資段階でつまずく危険性をはらんだ企業なのですが、一方でランニングコストの管理、即ち運営に関してはなかなかに優秀です。京阪のダイヤのきめ細かさ、事故からの復旧の早さ、災害に対する強さ、車両の豪華さなどは、大手私鉄の中でも一目置かれています。

 

また、京阪の拡張戦略においても成功例はあります。1963年開通の淀屋橋延長線1.3kmと、1989年開通の鴨東線(三条―出町柳間)2.3kmです。距離は短いものの、それぞれ地下鉄御堂筋線・堺筋線および叡山電鉄と接続して、京阪の地位を大きく高めました。

 

話が前後しますが、京阪は淀屋橋延長線開通の約半年後に奈良電気鉄道の持ち株をすべて近鉄に売却しており、見返りとして近鉄が所有していた京福電気鉄道の株を入手して傘下に収めました。その京福から1985年に独立したのが叡山電鉄です。

 

当初は京福が全額出資して誕生しましたが、鴨東線開通後は徐々に京阪との結びつきを強め、現在は京阪ホールディングスが株式の100%を所有しています。京阪が主に特急車両で培った設計思想も色濃く反映されており、「きらら」「ひえい」といった魅力的かつ実用的な観光車両を走らせて人気を集めています。

 

さらに、京都京阪バスは京阪電気鉄道が100%出資、京阪京都交通は京都京阪バスが100%出資、京都バスは京福電気鉄道が76.92%・京阪ホールディングスが23.08%出資です。現状でも京都市内交通において交通局に次ぐ地位を築いており、その観点からしても京阪に地下鉄事業を委ねるのは自然な成り行きです。

 

ちなみに、大阪市営地下鉄の民営化に尽力した藤本昌信氏は、もともと京阪の出身です。のちに京福の副社長を務め、30年ぶりの復配を実現した実績を買われて大阪市に一本釣りされました。そういう優秀な人材が育つ土壌はあるということです。

 

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