11篇 指切りをした その24
やはり立木佳史は立木千晶の弟だった…。街中で会った時の親しげな雰囲気は姉弟だからだったのだ。もっと早く紹介して貰っていたら、兄との婚約も素直に喜ぶ事が出来たのに…。そんな複雑な思いを抱いていたせいか、食事もろくに喉を通らなかった。けれども嬉しかった。心から安心した。立木千晶の弟だとハッキリしたからか、柔らかな気持ちで対面する事が出来た。顔合わせを終えると兄のアパートに一泊して、両親は慌ただしく帰って行った。結婚式を終えるまで気の休まる時は無いのだろう。親になるって大変な事なのだ、としみじみ思う。
十二月になると立木千晶から買い物に誘われる事が多くなった。新婚生活で必要な品物を揃えるのを手伝って欲しいと言うのだ。母親は忙しいし弟では趣味が合わないので力にならない。義妹になる私の意見を聞きたいと言われれば嫌とは言えない。立木千晶は私を志穂ちゃんと呼ぶ。私はお義姉さんと呼んでいる。最初は照れくさかったけれど、今では当たり前の様に呼ぶ事が出来る。
二人であれが良い此れが良いと悩みながら選び合った。女同士の買い物がこんなに楽しいと思ったのは初めてだ。友達では無く義姉妹だと言う気持ちがそうさせるのだろうか。なんとなく甘えてしまっているみたいだ。買い物に時間を掛け過ぎて、気が付いた時には日暮れ時だった。
晩御飯を一緒に食べに行きましょう。今日のお礼にご馳走させて。
半ば強引に誘われて連れて行かれた場所は 和食処たけうち だった。ここの女将さんが父方の親戚だと言う。
ここ、友達と入った事があるんですよ。お魚が美味しかったです。
常連客に勧められて食べた魚料理を思い出して言うと千晶は吃驚した様だった。世間は意外と狭いのかもしれない、と思った。その狭さを立木佳史が入って来た事で実感させられた。席を探して辺りを見回していた佳史も、私達を見て驚いていたが、口元を綻ばせると、真っ直ぐにやって来た。私を見て会釈をしてから、千晶の隣へ腰を下ろした。