12篇 遠い日の約束 その18

 

 姉の結婚準備は順調に進んでいる様で何よりだ。たけうち以来、志穂に会う機会は無いけれど、姉から話を聞かされているからか、離れている気がしない。もしかしたら結婚式まで会えないかもしれない。そう考えると流石に心が騒いで落ち着かない。


 姉の事に気を取られているからなのか、一日一日が光の速度で過ぎて行き、あっという間に年の暮れを迎えた。この年末は、姉が新居の内装を整えたり寝具を揃えたり、と忙しそうなので尚更だった。姉が立木姓を名乗るのは此れが最後だと思うと、つい感傷的になってしまうのは仕方が無いだろう。姉弟である事は変わらないのに、絆が一つ薄くなってしまう気がする。志穂も同じ思いを抱いているのだろうか。


 姉が立木千晶として過ごす最後の大晦日は未来の夫が一緒だった。まだ結婚していないから家族水入らずの中に入るのは申し訳ない、と遠慮するのを強引に連れて来たと言う。母が年の暮れを一人で過ごさせるのは可哀相だから誘う様にと言ったらしい。此れからは此の顔ぶれで会う機会が増えるのかと思うと嬉しい。志穂が此処にいる姿をチラッと思い浮かべてしまい、慌てて胸の奥に仕舞い込んだ。付き合ってもいないのに未だ早い。顔が赤くなった気がした。


 三月三日、いよいよ姉の結婚式だ。花嫁衣裳の姉は綺麗だった。白無垢と綿帽子で品の良い仕上がりに、来客たちも称賛を惜しまなかった。ふっと志穂を見ると感激して目を潤ませていた。挙式も披露宴も滞りなく終わり、夫婦となった二人をホテルまで送って其々帰途に就いた。二次会が無いのは明日の新婚旅行は飛行機の出発時間が早いからだった。