5篇 面影を抱いて その2

 

 そうか、小野寺鈴子の妹は東高校生だったのか、道理で西高校で見掛けなかった訳だ。名前を知らなかったので声を掛ける事はしなかった。いや、名前を知っていても素通りしただろう。向こうは此方を知らないだろうし、見知らぬ男子に声を掛けられても気持ち悪いだけだろう。それにしても、やっぱり姉妹だ。面立ちが似ている。この場に肇が居たら、と思った。鈴子に似た妹を見て心穏やかで居られるだろうか。西高校生でなくて良かった、と僕は何故かホッとした。僕達は三年生だから卒業してしまうので、来年の交流会で逢う事も無いだろう。肇が心見だされる事なく、この先を生きて欲しいと思う。

 

 高校を卒業して、僕達は其々の道へ進んだ。肇は北の大学へ、辰雄は雪国の大学へ、専門学校の僕だけが地元に残った。何の約束もしなかったが、此処が故郷なのだから、何時か会えるだろう。その時は少しは大人になって居る筈だ。小学生の頃からの付き合いだった。将来の夢も未だ気にする事なく、体を使って力一杯遊んだ。中学生になって、少しずつ現実が見えて来て、遊んでばかりも居られなくなったが、仲間意識は潰えたりしなかった。子供の様でいて大人の振る舞いが求められた高校生になって、やっと足を地につけて考えなければいけない事を自覚させられた。仲間との別れが現実的になって来ると、妙に焦燥感を抱くようになって落ち着かなかった。

 

 休みの日に町へ出ると、高校時代の仲間たちを見掛けたりする。女子も男子も地元に居る子は殆ど働いて居たので、自立している姿を見ると、焦りの様なものを覚えてしまう。専門学校へ進学した事を後悔はしていないが、もしかしたら別の道が合ったかもしれない、と時たま思ってしまう。