バチカンは5月8日、教皇選出のための会議「コンクラーヴェ」で米国出身の枢機卿を新教皇に選出した。
選出のための投票は、外部の影響を徹底的に避けるため「鍵をかけ」た会議場で行う。
ブラジルにはこの会議に出席し投票する資格のある枢機卿は7人おり、中でもレオナルド・シュタイナー枢機卿 がある程度有力と目されてきた。名前ですぐ分かる通りブラジル南部出身のドイツ系だが、アマゾン地域で長い間貧困問題や環境保護に積極的に取り組んできた人。
コンクラーベとはラテン語でcon clavis、ポルトガル語ではcom chave、すなわち、
「鍵をして行う」という意味。
ということで私はブラジルでの貴重な経験を思い出した。
カトリックでは(プロテスタントでもそうかも)、カーニバルと同時期に行う retiroという習慣がある。日本などキリスト教信者が少ない地域ではなじみがないが、教会関係者や修道者ではない俗人がカーニバル期間中、俗世界を離れ修道院で神への祈り・聖書の読み込みなどのみを行って過ごすというものだ。
聖書も持っていなかった私は興味しんしんで申し込んだ。
持ち込み可能なのは衣服と聖書のみ。一人1室の部屋は8帖位の広さで、あるものは固いベッド、サイドテーブル、粗末で頑丈なクローゼット、聖書読みのための台のみ。三食つき。精進料理風なメニューで、特にオクラのスープは驚くほど美味しかった。
1日に数回聖書の勉強会のようなものがあったが私は参加しなかった。
多分分からないだろうと思ったので。
修道院は大通りから2~3分入った場所だが、騒音は皆無。よく手入れされた庭、礼拝所、居住部分、鳥の鳴き声、大きな木々のため涼しくさえ感じるここは世界的に有名なカーニバルの喧騒とは別世界。
退屈で庭をウロウロしている時、私は中年の女性(中小企業の経営者)から声をかけられ、「毎年来る。一年で一番貴重な時。俗事を全て忘れて至福の時」と幸せに満ちた顔で言われた。修道女らにも優しい声をかけられ、私はそれだけで幸福感を感じた。皆、何と穏やかな話し方なのだろう。
当時は退屈で死にそうだったので、美味しい食事に惹かれながらも2日でお別れしたが、今考えると何という至福の時だったのだろうと、思い出すだけで幸せな気分に浸れる。