1)短時間等尺運動:HettingerとMullerによる。
筋力増強効果は最大筋力の2/3の負荷で得られる。
動かないように固定した抵抗に抗して5~6秒間の最大収縮を行う。
2)漸増抵抗運動:軽度の負荷から最終的に最大負荷を与える方法。
最大負荷の前 段階の収縮は神経筋系に準備的な調整効果を持つと言われる。
<10RM>関節の全可動域にわたって10回反復して運動できる最大抵抗量
・DeLomeの漸増抵抗運動(DeLomeの原法)
10RMの 10%の力で10回反復運動
10RMの 20%の力で10回反復運動
10RMの 30%の力で10回反復運動
10RMの 40%の力で10回反復運動
10RMの 50%の力で10回反復運動
10RMの 60%の力で10回反復運動
10RMの 70%の力で10回反復運動
10RMの 80%の力で10回反復運動
10RMの 90%の力で10回反復運動
10RMの100%の力で10回反復運動
1段階ごとに2~4分休息をとらせてもよい。
1週間の内5日間訓練する。10RMを毎週1回計測する。
・DeLome、Watkinsの方法
10RMの 50%の力で10回反復運動
10RMの 75%の力で10回反復運動
10RMの100%の力で10回反復運動
・McMorris、Elkinsの方法
10RMの 25%の力で10回反復運動
10RMの 50%の力で10回反復運動
10RMの 75%の力で10回反復運動
10RMの100%の力で10回反復運動
1日1回、週5日行う。
12週以上にわたり毎週5%の筋力増強得たとの報告有り。
・McGovern、Luscombeの方法
10RMの 50%の力で 5回反復運動
10RMの100%の力で10回反復運動
DeLomeの原法と同じ効果で、疲労は少ないとの報告有り。
3)漸減抵抗運動:抵抗を小さくしていくことで患者の疲労を少なくし、筋の最大限の運動を行わせようとするものである。
・オックスフォード法
10RMの100%の力で10回反復運動
10RMから1lb減少させた力で10回反復運動
10RMから2lb減少させた力で10回反復運動
10RMから3lb減少させた力で10回反復運動
10RMから4lb減少させた力で10回反復運動
10RMから5lb減少させた力で10回反復運動
10RMから6lb減少させた力で10回反復運動
10RMから7lb減少させた力で10回反復運動
10RMから8lb減少させた力で10回反復運動
10RMから9lb減少させた力で10回反復運動
翌日には前日の10RMに1lb(ポンド)を加算し、それをその日の10RM とし前日と同じ訓練を行う。
・Zinovieffの方法(DeLome原法と正反対)
10RMの100%の力で10回反復運動
10RMの 90%の力で10回反復運動
10RMの 80%の力で10回反復運動
10RMの 70%の力で10回反復運動
10RMの 60%の力で10回反復運動
10RMの 50%の力で10回反復運動
10RMの 40%の力で10回反復運動
10RMの 30%の力で10回反復運動
10RMの 20%の力で10回反復運動
10RMの 10%の力で10回反復運動
・McGovern、Luscombeの方法
10RMの100%の力で10回反復運動
10RMの 75%の力で10回反復運動
10RMの 50%の力で10回反復運動
4)短時間最大運動
・ローズ法:力を抜いた状態から抵抗を負荷して重力に抗した位置まで動かし、 その肢位を5秒間維持できる最大の抵抗を負荷する。
例:大腿直筋
最大抵抗で膝の屈曲90度から伸展0度までの運動を行わせ、完全伸展位 で5秒間保持し、毎日すこしずつ抵抗の量を増加させる。
5)等速運動:動きのスピードは機器で一定に保たれ、全関節可動域にわたって最 大筋緊張を得ることができる。
6)その他
・マッスルセッテング(等尺収縮運動をいう):
等尺収縮運動で、痛み、ギブスによる関節固定などによって四肢体幹の関節を動かすことができない場合に用いられる。筋力増強と言うよりも、筋力の維持、廃用症候群の防止に用いられる。高齢者では方法取得困難な場合あり。
・PNF
運動パターン、最大抵抗の負荷などを利用して筋力増強訓練としても用いる。 パターン運動させる事で、種々の関節とその運動群に関与する筋を同時に増強 する事ができる。
・電気刺激による筋力増強
随意的筋収縮に比べて、中枢神経系の覚醒状態は低い。
(前十字靱帯再建術後患者の筋力増強法として有効との報告あり)
・動作による筋力増強
種々の基本動作(階段昇降、歩行等)を行わせることにより、弱化した筋力を増強する方法。
参考文献
岩倉博光他編、理学療法士のための運動療法、金原出版株式会社、p30より
千住秀明他編、運動療法Ⅰ、神菱文庫、p129より
上田敏:目でみるリハビリテーション医学第2版,東京大学出版会,80,1998