「一生守っていく。

 真由美ちゃんも子供達も。

 俺はずっと見守ってるし、ずっと傍にいる。

 ただ・・・それは親友として・・・」


「前に直喜がふと言った事があるんだ・・・」



「真由美は俺とじゃなくて、郷太と一緒になった方が

 幸せだったんじゃないかなぁって思う時があるんだ。

 だって、俺不器用だし、女の子の喜ばせ方とかも

 知らないし。真由美は何でも喜んでくれて、

 そんな素振りは見せないけど不安なんだよ。

 好き過ぎて不安なんだよ。

 真由美みたいに可愛いくて出来た子が

 こんな俺で良かったのかなって。

 だから、郷太の方が・・・」

 

 

「さすがにこれを聞いた時には激怒したよ。

 思いっきり直喜を殴ったよ。

 二度とそんな事言うなって言ってやった。」



「そんだけ好きな子と結婚出来て、子供も出来て

 何で不安になるんだよ。

 お前のその純粋で真っ直ぐなとこを真由美ちゃんが

 好きになったんだろ。

 もっと自分を信じろよ。

 お前しか持ってないいいとこはいっぱいあるんだぞ。

 真由美ちゃんはおまえしかいない。

 お前が一生幸せにしてやれ。

 俺はずっと見てるからな。」



「分かった。

 二度と言わない。

 俺が一生守っていく。

 だからずっと見ててくれ。」



「俺は、直喜のこんな強い決意の言葉を

 初めて聞いた。

 これで大丈夫だなって確信出来た。

 最初は何言ってるんだこいつって思ったけどね。

 でも、ちょっと羨ましかった。

 好き過ぎて不安って言ったんだよ。

 俺は、人をそこまで好きになった事も好かれた事も

 あったかなぁって考えちゃったよ。

 ある意味、あいつの情熱は凄いよね・・・」




真由美ちゃんの大きな目から涙がこぼれた。

それから、堰を切ったように止めどなく涙が

こぼれ落ちた。



「直喜・・・ごめんね・・・

 私、ちょっと疲れてたのかもしれない・・・

 郷太君と一緒にいれば、直喜の傍にも

 ずっといられる気がしたから・・・

 私も直喜しかいない。

 直喜、一生見守っててね。」



真由美ちゃんは、直喜が目の前にいるかのように

話しかけていた。

いや、その時直喜はいたのかもしれない。



暫く泣き続け、ようやく落ち着いてきた。



そして真由美ちゃんは

俺の方を向いて、

今度は満面の笑みで言った。



「郷太君。

 これからもよろしくね。

 親友としてね。

 私には直喜がいるから。」



「なんかフラれた気分だよ。」



「フッたんだもん。」




俺と真由美ちゃんは

顔を見合わせ、大声で笑った・・・



「郷太君・・・私・・・」



その後、暫く沈黙が続いた。

俺は明らかに動揺していた。


そして、真由美ちゃんがゆっくりと口を開いた。



「言わないと後悔しそうだから言うね・・・

 私じゃ駄目かな・・・」



えっ・・・



俺は、言葉が出なかった。

何となくな感じはあったが、

まさかこんな直球でくるとは思わなかった。



「いや、もちろんね、郷太君には奥さんがいる。

 こんな事言っちゃいけないって分かってるの。

 でも・・・でもね、私の気持ちも分かってて欲しいの。

 私、もう誰とも結婚をする気はないの。

 一人で頑張っていこうと思ってるの。

 でもね、やっぱり不安だし寂しいの・・・

 先の事考えれば考える程不安なの。

 だから・・・私にとって郷太君の存在は特別なの。

 今の奥さんと別れて欲しいなんて言わない。

 でも、郷太君に会えば会う程頼りにしちゃうし、

 ずっといてほしくなっちゃうの。

 どんどん存在が大きくなっちゃうの。

 私だっていけないって分かってる。

 でも・・・でも、私を見放さないでほしいの。

 ずっと傍にいてほしいの・・・

 そして、いつか・・・いつか一緒になれたら・・・」



そう言って、

真由美ちゃんはその場で泣き崩れた。



俺は正直どうすればいいのか分からなかった。

当然結婚してるんだから、

いくら真由美ちゃんだろうとはっきり断るべきだ。

理屈ではそんな事分かっている。

ただ、真由美ちゃんの気持ちがはっきり

分かってしまった。

そして、俺の気持ちのどこかに

封印していた真由美ちゃんへの思いもあった。

目の前にいる真由美ちゃんをなんとか

してあげたい気持ちがどんどん強くなってきていた。

そして、その真由美ちゃんが俺の前で弱音を吐き、

俺を頼りにしてくれている。

そんな真由美ちゃんが泣き崩れている。




その姿に俺の心は決まった・・・



俺は立上り、


真由美ちゃんの横に行き、


そっと肩を抱いた。




そして・・・・







PS・・・皆さん更新のペースが遅くてすいません。

    人生、色んな事が起こるのでゆっくり、焦らず書いていきます・・・・

「でもね・・・

 パパも郷太おじちゃんだったら

 許してくれるかもね・・・」



俺は、この真由美ちゃんの言葉が

本心なのか冗談なのか真意を

計り知れなかった。

俺も真由美ちゃんもお互い

何となく惹かれている部分はあった。

でも、俺は当時夫婦仲は良くなかったが

結婚をしていた。

お互い何となく惹かれあっているのは

お互いの寂しさからきてるものだろうと思った。

真由美ちゃんは直喜を亡くし、

女手ひとつで2人の子供を育てないとならない。

この先の不安は計り知れないだろう。

俺は、結婚はしていたが家に居場所が

なかった。

それだけに、真由美ちゃんの家に行く事が

楽しみにもなっていた。



食事が終わり帰り道、

郷美ちゃんは乳母車の中で気持ちよさそうに

眠っていた。

直美ちゃんもお店で眠ってしまった為

俺がおんぶをして歩いていた。



「他人が見たら、どう見ても私達って

 家族に見えてるよね。」



俺は答えなかった。


何か、そこで「そうだよね。」って

言ってしまうとそっちに走って

しまいそうな気持ちになっていたからだ。

でも、真由美ちゃんは直喜だけの人だ。

そして、直美ちゃんも郷美ちゃんも

直喜だけの子供だ。

俺は、傍で見守ってあげるだけでいいんだ。

俺は、自分自身に言い聞かせていた。



ただ・・・



そんな時に、

真由美ちゃんは俺に言ってはいけない

一言を言った。




「郷太君・・・私・・・」