生まれた家は文具屋で、あまりいい思いをせずに育った。
それはずーと変わらず、成人して都会暮らしを始めても、実家が文具屋など口にする事は自分の値打ちが下がるとさえ思った。

できれば呉服屋とか酒蔵のある酒屋のお嬢さんとか言いたかったし、何人かにはそれらしき事も言って来た。罪深い話しだね(ざんげ)

そんなへんな見栄っ張りな私に惚れた男がいた。
言いたくはないが、あきんどの町大阪の、こともあろうに文具屋のぼんぼん。

あってはならない文具禁断の恋ってヤツが、我が身に起きたのだった。

今で言うヤバイ!
こりゃ、ヤバイよ。
そのヤバさは単に文具屋だけでは終わらなかった。
何故ゆえに?

遡ること、かなり遡ること、40数年前のある夏の終わりの事でありましたとさ。

こんな家なんか大嫌い!
それ以上に、父ちゃんも大嫌い!
文具屋の後なんかぜぇったい継がん!、
文具屋なんかクソ食らえ!
文具屋なんか潰れてしまえ!
(相当ヤンチャでした)
「そうか!、わかった好きにせぇー!」
父親は激怒し、売り言葉に買い言葉。

たが、親とはなんと情の深きものか、出て行けとは言わないね。
(しかし、出て行けを誘導してる)

結局家出同然→大阪に辿り着き→あてもなく彷徨い→恋に落ち→文具屋の後継ぎぼんぼんの嫁になった。


そして息子も私以上に遠回りしたけども文具屋となった。
そんな訳で、
文具屋とは何かと問われたら、災い来て福来たると答える。

おしまい。