あの腹黒

怒りと憎しみが マムシの様に

真っ黒な腹の中で

とぐろを巻いていた


本当に 親方様は

腹黒かったのだろうか?


私はどこか  腹黒いもの、

 この人 心が汚いなあ、とは感じなかった


確かに 先祖代々 鬼舞辻 無惨を 

討ち取りたいという気持ちを持っていた


 それを1000年もずっと 

一族で受け継いできた 


それだけ長い年月 

叶わなくても 諦めないという想い

 それは すごいなと思う 


そして その間に たくさんの 若者たち、

 隊士たちの死というものがあった 


あれだけ たくさんのお墓が

あった、 それを毎日どんな気持ちで 

お墓参りしていたのだろうか


そういう意味でも

そんな先祖代々の思いを受け継いだ 

それでいながら自分もまた

 先祖代々の短命だということも

宿命として 最初から 分かっている 


ただ 短い だけではなくて

 病気に蝕まれていくという 

そんな人生の中で 自分の命を全うする


 ふてくされるわけではなく

 自暴自棄になるわけでもなくて


 淡々と自分のやるべきことを

全うする という 

そんなある 意味 

素晴らしい人生だったと思う


彼が本当は腹黒くて 

仏の顔を貼り付けているのだとしたら


 無惨のように時々

心がぶれて 本心が出てしまう 


顔色が変わったり 

言葉が変わったりしても

おかしくないような気がする


 ましてや 自分にとって

『 最期 』の時間 


いつ自分が殺されても おかしくない 

もしくは 寿命が尽きても おかしくない 

そんな文字通り 最期の瞬間に

あったわけだから 


だとしたら

自分の本性が出てもおかしくない 


偽っているのだとしたら

なおのこと ボロが出てもおかしくない


 でも そんなものは 

これっぽっちもでなかった