神田神保町の三省堂、書泉グランデ、岩波書店、東京堂やたくさんの書店はほとんど北向きに並んでいる。これは売物の書物が日に焼けぬよう配慮されていると、昔から言われているが、小学館、集英社、岩波書店、有斐閣などの出版社は、北向きでなく近隣に散在して、秋葉原という電気街に対して神保町という本屋街を形成している。
ほぼ半世紀以上前から、水道橋の大学から毎日仲間たちとこの界隈をうろついていた。食堂、パチンコ屋、映画館、喫茶店、本屋などは大方知り尽くし、その後も今までずっと、気が向くと放浪徘徊している。初めて自分の単行本が出た時は、三省堂や書泉グランデにデーンと平積みされてあって、近づくことも出来ず遠くから眺めていた。
その後少しずつしかし着実に、この街も更新されていき、何よりも書店の文芸棚が様変わりして、出版業界のパイが小さくなっていることを実感させられてきた。それは神保町だけではなく、時代という仕方のない流れだと知ってはいるけれど、やはり一抹の寂しさはいかんともしがたい。
上の写真は神保町ではなく近所の書店で、ずっと古書店と思って取り過ぎていたのだけれど、昨日初めて入って驚かされた。古書店ではなく、新刊書籍も混ざった書棚には、ジャンルもカテゴリーも混沌とした沢山の本が並べられてあった。新刊本には「定価」というラベルがあり、古書本は鉛筆書きの金額ラベルが貼ってあって、それらが雑然と棚に並べられたり床に積まれたりしている。なにより尋常な本屋でないと気付いたのは、それらの本には思わず手を出したくなる、ある種のクオリティーを感じさせる本が多いことだった。
本を書く者に対しては才能のあるなしがよく言われるけれど、実は本を読む才能こそがもっと評価されてしかるべき文化なのだろうと思っている。そういう意味でこの「青いカバ」の経営者は、近頃は絶滅危惧種と思っていた優れた読む才能を持つ、ひそやかな文化的功労者なのだと感じさせられた。
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