ここのところあれこれあって、まず二月ほど前、下の奥歯が折れて根っこだけが残った。放っていたら歯茎がにわかに腫れ、痛くて眠れず歯医者に行った。根っこを抜かないと治らないと言われたが、心筋梗塞以来毎日さまざまな薬を飲んでいて、,「抗血小板薬服用カード」を見せて、抜歯は出血が止まらくなる恐れがあると言われていると告げた。が、歯医者は慎重に抜歯し、何とか止血してくれた。その数日後何だか熱っぽく、測ったら38度以上あって、いつものクリニックに行ったら何と2度目のコロナを告げられた。昨年と同じ医者で、今は政府援助も終了したので即効薬のゾコーバは1万5千円になると言われ、泣く泣く払った。

 そのコロナの待機明けに中学のクラス会があった。団塊世代の中学は一組55、6人で、それがAからJの9組もあって、私はI組だった。クラス会は全員76、7歳で、すでに何割かは会うことも話すこともできない場所に逝ってしまっている。それでも当日は8人が集まり、結構長い時間なんやかんや喋って楽しい時間を過ごせた。

 

 ということで、何となく気の重い日々が少しだけ明るくなり、その気分をさらに向上させるべく、先週写真の芝白金台にある松岡美術館へ出かけて来た。というのも、ネットのNOTEで、この美術館で「レガシー」というタイトルで、ピカソ、モジ、シャガール、フジタなどのエコール・ド・パリを特集しており、折からブラッシュアップしていた過去原稿もあって、強く惹かれたからだ。

 過去原稿は「ELLE」という女性ファッション誌に1年間連載した絵画小説で、三十数年も前のものだが、20世紀初頭のモンパルナスが舞台の時代小説だから腐ってはいない。原稿はピカソなどエコール・ド・パリの画家たちがまだ何者でもなくただ貧しかった時代に、そこへ迷い込んだ日本人の世捨て人を狂言回しにした実話小説で、しかし23枚の絵画掲載という製本コスト面の制約、および私の他の文芸書販売実績の脆弱さから、編集者OKでも,営業部の承認が取れず、書籍に至らぬまま長く忘れていた作品だった。最近も何人かの編集者に検討してもらっているが、文芸書のパイはますます小さくなっているようだ。

 

 そんな近況ながら、初めて行った松岡美術館は小ぶりながら常陳の彫刻や絵画のそれぞれに洗練された気品があり、特集もふくめて久々にしっとりとした心地いい時間を過ごすことができた。そしてまだまだ知らない美術館や博物館などがあちこちにあることに、あらためて気づかされた。

 さめていくコーヒーも残り少なくなって、カップの底が見え始めた今日この頃。せめては心地いい時間こそ大切に過ごして行けたらと思う。

 

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