長女が入院して4,5日が経った日の晩…
「ただいま~」
今日はバイトだった私は 8時過ぎに帰宅
すでに家族全員帰宅していた たった一人長女をのぞいて…
しかし何やらいつもと違う空気が 食卓を囲んでいた
「どうしたん?」
私がつとめて明るい声で聞いた
「ケイ そこ座れ
オマエにもなー全部話したるわ」
帰宅するなり父が唐突に言った
アルコールをけっこう摂ったのだろう 目はすわり顔も赤くなっている
母や家族に何か言いたいことがあるとき 気弱な父は
アルコールの力を借りて 酔った勢いで逆切れともいえる態度で
いつもケンカをふっかけていた
それがいつもの父のやり方だった
「もう!!やめーよ!!
お父さんいい加減にして!!」
二女若葉が泣きながら父に抵抗する
何が何やら分からないが
いつものごとく言い合いをしていたことだけは分かった
「ふんっ どうせバレるんや 全部はなしたらー
愛はなー 白血病なんや
助かるんもなー30%で
余命半年言われとんや!!」
「・・・・・・」
私は絶句し 隣で姉が声をあげながら泣いていた
母は俯いたまま 声を殺して涙を流している
「…なんでいうてくれんかったん…」
私はやっとの思いで 振り絞って言葉に出した
「しるかぁ!コイツらがオマエにはだまっとけ!!
言うて隠しとったんや!!どうせバレるのにのぅ」
父の態度への怒り
家族が私に隠していたことへの精神的ダメージ
長女の病気や病状を知った衝撃
色んな感情が入り混じり
怒っているのか悲しいのか分からないが
とめどなく涙があふれ出てきた
「なんで…なんで…」
私はこんな言葉しか出てこなかった
「ケイ 向こういこ」
姉はそう言って私の手を引き 私の部屋へ誘導した
部屋に入るやいなや
「ごめんな!!」
と姉が謝ってきた
「なんで…隠してたん?」
私が泣きながら聞き返した
「アンタまだ16やん…こんな多感なときに
突然ほんまのこと言うて 動揺させたくなかってん
でもいつかは ちゃんと話そうと思ってたんやで」
姉が真剣な顔つきで弁明する
「そんなん…家族やのに…なんでそんな気使うんよ…
自分だけ知らへんほうが いやや…」
そう言ってさらに涙がボロボロ出てくるのが 自分でわかった
「うん ごめんな」
姉がぎゅっと私を抱きよせ 何度も謝って来た
「お父さん何で あんなんなっとん?」
さらに私は姉に聞いた
「明日からお姉ちゃん 抗がん剤の治療がはじまるねんて
すごいしんどい治療やって…先生から聞いたみたい
それと…色んな話を聞いて怖くなってもうたんやろな…
今日仕事から早く帰ってきて すでにあんな酔ってる状態やってん」
「何でお姉ちゃん 辛い目あってるときに あんなことできるの?
なんでなんで」
父の態度がとにかく腹立たしかった
二女も私も長女の入院が分かってから 家では明るく振舞っていた
学校ではいつもよりはしゃいでいた
家族を…みんなを困らせちゃいけないって思ったから
でもそれ以上に
そうしないと
自分自身崩れてしまいそうだったから…
そうするしか出来なかった