◆◇一真の手記◇◆
八月某日、赤紙が届いた。
それはつまり、戦争に行かなくてはならないということだ。
戦争=死
そればかりが頭に浮かんでは離れない。
母さんや優作、半蔵にかれん。
皆にはまだ言っていない。
入隊まで二週間。
今のうちにやり残したことをやろう。
原案・ウルトラマンガイア
第39話「悲しみの沼」
※この作品はフィクションであり、実際の歴史事実とは関係ありません。
~本編~
太陽がギラギラと照りつける真夏の昼下がり。
一真はラジオで広島と長崎の惨状を聞いていた。
沢山の一般市民の命が一瞬で奪われ、川には全身火傷の熱さからか、水を求めて飛び込んでいった人々でいっぱいだった。
しかし、川は放射熱で急激に煮えたぎり、飛び込んだ人々はそのまま死んでいったという。
これが原子爆弾のもたらした凄惨なる惨状であった。
一真はこのニュースを聞くと自分の死に対してより一層の恐怖を強めていった。
町を彷徨している一真を見かけた半蔵が声を掛けた。
半蔵「おっ一真!!どうかしたんか~?そんな浮かない顔をして。」
一真「なんだ、半蔵か。」
半蔵「なんだ~って拙者で悪かったでござるな。」
一真「実はさ…」
一真は親友の半蔵に最初に赤紙のことを打ち明けた。
半蔵「それは仕方ないんじゃないか?男として生まれた以上、御国のために戦う運命なんだ。一真の場合、それが今なんだよ。」
いつも忍者のような振る舞いと言動の半蔵が珍しく真剣に答えた。
一真「御国のためか。俺はこんな国…」
半蔵「シーッ!!それは言ったらまずいやつだろ。」
一真「あぁ、悪かったな。」
一真は仰向けになった。
一真「とりあえず、俺はもうここには帰らないかもしれない。父さんや、兄貴みたいに。」
半蔵「何言ってるんだよ。お前の親父さんや兄さんは立派に戦った英雄の一人だろ?」
一真「何が英雄だよ。こんなの始めから無謀だとわかってた戦いに父さんも兄貴も参加させられて即死。これのどこが英雄なんだ?」
「俺にはわからないね。」
半蔵「一真…」
一真「悪い、少し熱くなっちまった。」
半蔵「別にいいけど、家族には言ったのか?あと、かれんにも。」
一真「まだ言ってない。母さんなんて、俺のこと誇らしいとか鼻が高いとか言って送り出してくれるんだろうけど、本当は悲しいんだろうな。」
「そんなこと考えるとなかなか言い出せなくてさ。」
一真は夕方、家に帰るといつも以上に家事を手伝った。
一真の母「一真?今日はやけにはりきってるわね。何か良いことでもあったの?」
一真「別に~ただ母さんに少しでも親孝行したいな~って。俺に出来ることはこれくらいだけど。」
そう言うと黙々と皿洗いや洗濯物をたたんでいく。
さらに優作と外でキャッチボールをした。
優作「今日の兄ちゃんなんだか変なの~」
一真「そんなことないだろ?ほら、投げるぞ!!」
しばらく投げ合ってから家へ戻ると優作は静かに寝息をたてた。
すると母さんが静かに話を始めた。
一真の母「優作ね、来月から地方に疎開することになったのよ。」
一真「そうなんだ。寂しくなるね、また。」
一真の母「それで、一真はいつ行くの?」
母さんの不意な問いかけに慌てる一真。
母さんは全て知っていたようだ。
一真「なんだ、知ってたのか。二週間後だよ。」
一真の母「あなたのことなんて全てお見通しよ。何年母親やってると思ってるの?」
母さんは笑顔で言った。
きっとその笑顔の中に悲しい気持ちをこらえているのだろうと一真は思った。
一真「やっぱ母さんにはかなわねーや。」
一真もまた笑いながら言った。
一真の母「やり残したことのないように全てを済ましてから行きなさい。」
一真「うん、わかってる。」
星空の下、縁側で腰掛けていると優作の寝息が聞こえてくる。
そこへかれんの声が聞こえてきた。
かれん「一真?そこにいる?」
お隣さんのかれんは静かに仙崎家の庭へとやってきた。
一真「いるけど、こんな時間にどうした?」
かれん「隣いい?」
かれんは一真の隣に座ると話を始めた。
かれん「半蔵から聞いたよ、赤紙のこと。」
一真「なんだ、半蔵から聞いたのか。その通りだよ。俺、軍隊に入ることになった。」
かれん「そっか…」
二人の間に微妙な空気が流れる。
一真「お前とこうして星空を眺められるのもあと何回だろうな~」
不意に出た一言を聞いて、かれんは一真の肩に身を委ねる。
かれん「幼い頃からずっと一緒だったよね、私たち。」
一真「そうだな、俺とかれんと半蔵。」
かれん「違くて、私と一真が二人でこうやって星空を眺めていたこと。」
一真「かれん…」
かれん「しばらくこうしていたいな。」
一真「やれやれ~隙あり!!」
一真はかれんにデコピンをして立ち上がった。
かれん「いったーい!!ひどいよかずまー!!今度は私の番だからね!!」
二人はしばらくじゃれ合うと、半蔵も含めた三人で海に行く約束をした。
思い出作りのために。
それぞれの自室で布団に横になっている一真とかれんの胸中
かれん「(一真本当に行っちゃうんだ。)」
一真「(かれん、ごめんな。)」
国際連盟地下日本支部
対怪獣実働攻撃部隊“GAJET”の基地
???「私はあの青年なら十分に活躍してくれるだろうと思っています。」
大神管理官「そうですか、あなたの推薦なら間違いないのかもしれませんね~」
「だが、彼は今頃戸惑っているに違いない。日本軍へと徴兵されると思っているのですからね~」
???「そうですね。ですが、怪獣たちへの恐怖心を感じさせない彼の勇敢な行動力は我が隊には必要不可欠。」
大神管理官「椎原隊長も楽しみにしているみたいで。」
???=椎原(しいはら)隊長は一真の写真を眺めながらコーヒーをすすった。
To be continued
◆◇エンディングテーマ◇◆
他の星から/乃木坂46
https://www.youtube.com/watch?v=DZqYwpImtPU&feature=youtube_gdata_player
◆◇メシアの軌跡◇◆
まず始めに、今回から実験的にまだ試行錯誤中ですが、冒頭に一真の手記を添えようかな~と思っています。
手記というと戦時中を彷彿とさせるようなイメージが私の中にあるので(笑)
それでたまに最後にはモノローグも添えようかなと思っています。
さて、今回のお話は一真と彼の周囲の人々たちとのドラマを描きました。
(そんな大げさなものではないですけど 笑)
入隊を控えた一真と周囲の人間たちの心境は寂しく、悲しいものです。
当時の日本でも徴兵を控えた人々とその家族、友達や恋人たちはこのような心境だったのかもしれませんね。
最後に国際連盟地下日本支部の対怪獣実働攻撃部隊“GAJET”が少しだけ登場しました。
国際連盟から脱退した日本でしたが、それは表向きのことでした。
本当は連盟が日本の地下に最近現れるようになった怪獣に対抗するための特殊部隊を配備させていたのです。
対怪獣実働攻撃部隊“GAJET”(ガジェット)は
Global Attackers Japan Expert Teamの頭文字を取ったものです。
もっともらしい英語を並べただけなのでおかしくてもそこは突っ込まずに流していただきたいです(笑)
椎原隊長およびGAJETについては後ほど詳しくお話します。
◆◇次回予告◇◆
出征前の最後の夏の思い出を作るために一真はかれん、半蔵と海に行く。
しかし、そんなときでも怪獣は迫っていた。
全てを終えた一真はこの生まれ育った町を跡にする。
次回、「つながりのお守り」
お楽しみに!!
