11月23日その1












 昨日お父さんが突然、大学の学園祭に行きたいと言いだしました。

 なので私たちは東京外語大に行くことになりました。

 私はまだ小学校4年ですが、こういった国際色豊かな大学を見ておけば、きっと将来何かの役に立つというのが、お父さんの言い分でした。


11月23日その2









 構内に入ると、なぜかお父さんはまっさきに受付でアルコールパスポートをもらうのでした。いぶかる私たちに父はヒトゴトのように言いました。「このパスポートがあれば、この学園祭では酒も飲めるらしい。変わった学園祭だ……」そのとき私は何かに気づきましたが、このあとの行動を黙って見守ることにしました。


 キャンパスを進むと、なんと26ケ国の国際色豊かな屋台が並んでいました。父はひとりさっそくスペイン料理の屋台の列に並びました。私と母にはペルシャ料理の屋台に並ぶように指示しました。

 持ち寄った料理を家族で食べるということを繰り返しましたが、その都度、父の右手には、あるときはウオッカが、あるときはチンタオビールが、あるときはウルケル(チェコビール)がしっかり握られていました。


 父は26ケ国全てを回るつもりでいたようですが、「いい加減にしなさい!」の母のひと言と、「何かほかのことやってないのかな」という私のつぶやきで、我に返ったようです。


 なのでその後、教室の中に入り、学生達の研究発表を見ました。パレスチナの写真展があり、ちょっと衝撃を受けました。ラオスの小学校も私たちの小学校とは全然違うのですね。教科書がないことも初めて知りました。


 今日のような学園祭に連れてきてくれた父に感謝したいと思います。父も良かっただろうと満足そうな笑みを浮かべました。帰ろうとしたとき、日本の屋台の前で「泡盛」という文字をじっと見ていた父が、少し寂しそうに見えました。


ナツコの日記より。


……情けない父親である。