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ともに考え悩みながら  宮本賢二  2012年6月14日

 プログラム作りにおいて、音楽は最も大切な要素である。どんなジャンルで滑るか、選曲一つで印象が変わるうえに、限られた時間内で演出効果を上げる編集も必要になってくる。「選曲については選手側の自主性を大事にしています。僕はこれでやりたい、わたしはこれでやりたいと提示された曲、またはコーチの『次はこういうふうにしたい』という意見を尊重する。自分が何かを提案するのは、それがあまりに選手に向いていないときだけ」


 驚くことに、振り付けは現場で氷に乗ってから一から行われるという。「前もってイメージづくりもしません。選手とともに氷に乗ってから、部分、部分の振りを決めていって、最後に形が出来上がる感じ」。ジグソーパズルのピースの一つ一つに絵を描き入れるような作業だ。


 「一番、難しいのはアイデアをひねり出すこと。毎回、それが本当に大変」と言う。一つの絵を描こうと、考え、苦しみ、悩みながら丁寧に作りこむ。選手にしても思いは同じだ。「今シーズンのショートプログラムは今までと違って軽快に踊る曲。体がついていかなくて覚えるのが大変です。ドリーム・オン・アイスでは良い演技を見せたい」と田中刑事は意気込む。


 「田中選手のベースの力を1とするなら、1・5くらいの難しめのものに仕上げています。頑張って習得すればより大きな力になり、それは2にも3にもなるから」。振付師と選手の志は一つ。すべては良いプログラムを作るために力を尽くす。


 「日本で活躍するすべてのスケーターに伝えたいのは、けがと体調だけは気をつけて、今はとにかく一生懸命頑張ってほしいということ」。それぞれが自分の演技の向上を追求し、全うしてほしいと話す。「自分も新しいルール変更やプログラムの進化に対応しながら日々前に進み、振り付けというかたちで精いっぱい応援しますから」。夢は選手のさらなる活躍だという宮本賢二の視線は、厳しくて温かい。