余録:「9条」をどう解釈するか。改正を口にする議員も…

毎日新聞 2012年06月10日 00時19分

 「9条」をどう解釈するか。改正を口にする議員もいる。「戦争の放棄」を定めた憲法ではない。「日本に特別の功労のある外国人」に国会の承認を得て日本国籍を与えるとした国籍法第9条のことだ。


3月の世界フィギュアスケート選手権で日本人女性とカナダ人男性のペアが日本に初の銅メダルをもたらしたのが発端。4月の世界国別対抗戦でも日本の初優勝に貢献したことで2年後のソチ冬季五輪でのメダル獲得への期待がにわかに高まった。


だが、五輪は同一国籍であることが参加条件になっていて今のままでは日本代表ペアとして五輪には出場できない。日本国籍を取得するためには5年以上の居住が条件だが、男性の日本滞在は5年間で計約200日に過ぎない。そこでウルトラCとして浮上したのが国籍法の9条なのだ。


世界選手権でのメダルと2007年以来日本連盟所属選手として活動してきたことが「特別の功労」に該当する、というのが参議院議員で日本スケート連盟の橋本聖子会長らの解釈だ。「大帰化」と呼ばれる特例措置だが、前例がない。


明治31(1898)年5月21日の貴族院国籍法案特別委員会での質疑が参考になる。「特別の功労」の例として政府委員の法学者はボアソナードの名を挙げた。お雇い外国人として日本に20年以上滞在して旧刑法や旧民法を起草したフランス人だ。


我が国が近代法治国家へと脱皮する中で顕著な功績を残した法学者と比較されてはスケーターもかわいそう。それでも日本国籍取得は可能とする新たな法解釈、法改正が必要ならば国会には憲法同様、慎重かつ丁寧な議論をお願いしたい。


http://mainichi.jp/opinion/news/20120610k0000m070098000c.html