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思い切って感情表現   2年後の夢へ・織田信成  2012年6月1日


 

 プログラムの振り付け終了後、織田信成は日本に戻らずリー・バーケルコーチの元に戻った。「どちらのプログラムもすごくいいって喜んでくれた。これをブラッシュアップしていけば大丈夫だと太鼓判を押してくれた」。バーケルコーチとの練習期間はとても充実した時間だった。「とにかくプログラムが気に入っているので練習するのが楽しくてたまらなかった」と息を弾ませる。


 今回、アメリカとカナダで振り付けの指導を受けているとき、トム・ディクソン、ローリー・ニコル両氏は口をそろえて同じワードを口にしたという。「もっと、感情的に」-。それはそのまま新シーズンのテーマになった。「ショートは恋する男性の気持ちを、フリーではめくるめくいろんな感情を思い切って表現して先生たちの求めるものに応えたい。観客にも僕が何を表現しているのか、何を見てほしいのかを感じ取ってもらいたい」


 新シーズンは世界選手権出場3枠をめぐり生き残り競争も激化するが、それに対する準備も始めている。「4回転は1日に3回くらい跳んでいる。感触は良くなってきているので、シーズンにはプログラムに入れるようにしたい」。回数を決めているのはけがの再発を避けるためだ。そして、再発するかもしれないというメンタルの戦いも抱えている。「それとレベル4を取れるスピン。自分でポジションを考えたり、新しいスピンの練習に時間を割いてやってきた。しかし、ほかにもやることはたくさんある。今は目標を持って頑張っていくだけ」


 織田には「最高の演技は一度しかできない」という持論がある。「自分のなかで及第点の演技は何度でもできると思うが、本当に百点満点の演技、観客とも一体になる演技というのはなかなかできるものではない。一番大きな試合でやれたら、それが自分の理想。しかし、とりあえずの目標は、一日も早くけがする以前の状態に追いつくこと。そしてもっとレベルアップしたい。そのためにも一日も無駄にせず夢に向かって前向きにやっていこうと思う」と言葉に迷いはない。


 けがの治療期間を経て覚悟はさらに固まった。「ソチオリンピックに行きたい」。2年後の夢へ続く道のりを、一つ一つ大切に進んでいく。リスタート、その先へ-。