浅田真央が3度目の世界女王目指す!
世界フィギュア選手権の見所を探る。

田村明子 = 文

http://number.bunshun.jp/articles/-/211221  

 

 いよいよ今季もっとも重要な試合、世界選手権がフランス・ニースで開幕した。

 シーズンはじめからどのコーチも選手も、この試合でピークが来るように調整してきたはずである。それだけに、GPシリーズで不調だった選手もこの大舞台では本領を発揮する可能性もあり、たとえトップ選手であっても気の抜けないレベルの高い試合になるだろう。

 女子のタイトルは、浅田真央とイタリアのカロリナ・コストナーの間で競われることが予想される。

 これまで3回、世界選手権の表彰台に上がったコストナーだが、まだタイトルを手にしたことは一度もない。GPファイナルの初タイトル、4度目の欧州選手権タイトルを手にして波に乗っている今季は、彼女にとって絶好のチャンス。本人もその気で手堅い戦いぶりを見せてくれることだろう。

女子で世界女王を3度以上取ったのはK・ヴィットとM・クワンだけ。

 浅田真央は12月に最愛の母を失うという人生最大の悲しみを乗り越え、そのわずか3週間後には5度目の全日本タイトルを手にした。2月の四大陸選手権ではサルコウなどの細かいミスで2位となったものの、シーズンはじめから見ると全体の調子は着実に上げてきている。

 彼女にとっての勝負は、他の選手との戦いではなくどこまで自分らしい演技ができるかに尽きる。

 四大陸ではフリーでトリプルアクセルを含む6種類の3回転ジャンプを予定していたが、ノーミスで滑ることはできなかった。ここで同じ構成の演技をノーミスで滑りきることができれば、彼女が3度目の世界タイトルを手にすることになるだろう。

 1970年以降、女子で3度以上の世界タイトルを手にしたのは、カタリナ・ヴィットとミシェル・クワンだけである。

鈴木明子と村上佳菜子にもメダルや上位進出の可能性。

 今季、安定した演技をこなしてきた鈴木明子にとっては、初の世界選手権メダルを手にするチャンスである。

 今季から3+3のコンビネーションを試合で取り入れ、音楽表現もさらにグレードアップして世界の表彰台に挑戦する。

 村上佳菜子は昨年初出場で8位と健闘。今季はどこまで順位を上げることができるかが注目される。

 米国のベテラン、アリッサ・シズニー、そして四大陸で浅田を破って初優勝した新全米チャンピオンのアシュリー・ワグナーなども油断できない選手たちだ。それほど注目されていなくても、気が付くと表彰台に上がっているというのは、フィギュア王国として長い歴史を持つ米国ならではの勝負強さに違いない。特に20歳のワグナーは世界選手権に挑戦するのは4年ぶり。GPシリーズなどとはまた違った空気の大舞台でどこまで実力を見せられるか、大きなテストの場となることだろう。

世界王者パトリック・チャンの連覇を阻むのは誰か?

 男子は、四大陸に続いてパトリック・チャンと高橋大輔の戦いになることが予想される。

 今季ずっと独走優勝してきたチャンだが、シーズン終盤の世界選手権まで息切れすることなくレベルを保つことができるかどうかに勝負がかかってくる。

 今季不敗を誇るチャンを破るためには、高橋がクリーンに4回転を跳ぶことが必須である。それ以外でベテランの高橋がチャンに引けを取るものは何もない。今シーズンの正念場として、彼が本領を発揮してくれることを期待したい。

 小塚崇彦は今回、現世界銀メダリストとして頂点に挑む。

 GPシリーズでは本来の滑りを見せられなかった小塚だけに、後半にピークを持ってくる可能性は十分にある。スケーティング技術ではすでにトップクラスといえる彼の勝利の鍵も、やはり4回転の成功にかかってくることだろう。

今大会のダークホース、羽生結弦という存在。

 また羽生結弦は、今大会のダークホース的存在だ。

 2種類の4回転をこなし、表現力も十分ある羽生にあとひとつ必要なのは、シニアの舞台で経験を積むことだけ。ここで素晴らしい演技をSP、フリーと揃えることができれば、国際ジャッジも彼を本格的にシニアのトップ選手の一人に加え、5コンポーネンツの点数も底上げされていくだろう。

 フランスからは、欧州メダリストのフローラン・アモディオ、元世界王者のブライアン・ジュベールが表彰台に挑む。

 いずれも実力ある選手だが、地元の盛大な声援を受けて萎縮するか、あるいは普段以上の演技を見せるか、そこが運命の別れどころになる。

 世界銅メダリストのアルトゥール・ガチンスキー、チェコ出身で元欧州王者トマーシュ・ベルネル、GPファイナルに到達したミハル・ブレジナ、スペインの選手としてはじめて今季GPファイナルで銅メダルを手にしたハビエル・フェルナンデス、そして全米チャンピオンのジェレミー・アボットなど、表彰台候補の選手は10人弱いる。レベルの高い白熱戦が期待できることだろう。