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 GP最終第6戦のロシア杯で3季ぶりの優勝を果たし、3年ぶりのGPファイナル進出を決めた浅田真央が、久しぶりの凱旋帰国会見を成田空港で開き、疲労感の中にも笑顔を見せた。

「優勝という形で良い結果を出したので、この良い流れのままファイナルを迎えたい。ファイナルに向けて何をしなければいけないかは分かっているので、万全の調子で臨みたい」

 カナダのケベック市で12月8日開幕するGPファイナルまでの約10日間は、GP2戦で浮き彫りになった課題に取り組むという。

 ショートプログラム(SP)では「勢いを出すこと」。佐藤信夫コーチから今季のテーマとして「スピードに勝る魅力はない」と言われており、ここ数年落ちていたスピード強化の成果が徐々に表れはじめている。「もっともっと勢いをつければ、スピードは出てくると思います」と、浅田も手ごたえを口にする。

 そしてロシア杯で3度ジャンプを失敗したフリープログラムは「ミスをなくすこと」。苦手なルッツジャンプとサルコージャンプ、トーループジャンプをプログラムに組み込み、 昨季から挑戦する5種類のジャンプを跳ぶことに集中するようだ。

 一から修正しているジャンプやスケーティングの基本に立ち返ることなど、様々な試みに取り組んでいる浅田は、代名詞でもあるトリプルアクセル(3回転半ジャンプ)とどう向き合っていくのか。今回のGP2戦では、初戦のNHK杯SPで挑んで失敗した1回しかトリプルアクセルを跳んでいない。

 そのことについて問われると、「ファイナルまで時間が短いので、その間に自分ができることを精一杯したい。フリーはステップやスピンでレベル4を獲得できたので大きな自信になったし、トリプルアクセルも諦めていない。これからも精一杯の努力をして(跳べるように)頑張りたい」と答えるにとどめた。

 昨季までこだわってきた一番の武器であるトリプルアクセルを跳ばないという選択をした今季の浅田からは、明らかに心の変化を感じ取れる。20歳を過ぎ、車の運転免許も取って自ら運転して練習場に通い、コスチュームでも初のパンツスタイルにチャレンジした。昨年9月から指導を受ける佐藤コーチとの“化学反応”が心の変化を生んでいるのかもしれない。この変化が今後どう浅田を成長させるのか、楽しみでもある。
 
 最後にGPファイナルを展望してみよう。ファイナル進出者のGP6戦の結果を見ると、(1)トゥクタミシェワ・177.38点と 182.89点、(2)浅田・184.19点と183.25点、(3)コストナー・182.14点と179.32点、(4)鈴木明子・177.26点と185.98点、(5)シズニー・177.48点と179.15点、(6)レオノワ・170.68点と180.45点となっている(順位は国際スケート連盟によるGPシリーズの最終結果)。

 ファイナル進出者6人の総合得点を見ると、浅田がただひとり、2大会とも180点台をマークしている。この数字だけでも、元世界女王の実力がいまだ衰えていない証拠と言えよう。トリプルアクセルという最大の武器がなくても、浅田には他の選手に勝るものがたくさんあるということだ。

 しかし同じ土俵、同じ舞台に立ってどう比較され、優劣がつくかは、その時のジャッジや会場の雰囲気によっても変わってくるはず。初めて競うロシアの新星、トゥクタミシェワとの勝負は、今季一番の注目度になる。
 
「(昨季と同じプログラムの)フリーはジャンプミスがあったけれど、他のエレメンツや流れに手ごたえを感じている。あとは、100パーセントの演技をするだけ。今は試合が楽しみでワクワクしている。(トゥクタミシェワについて聞かれ)14歳で若くて元気いっぱいの選手なので、自分も負けないように頑張りたい」

 6年前の2005年に華々しくシニアデビューした浅田にとって、トゥクタミシェワは当時の自分自身とも重なり合うに違いない。強敵との華麗な戦いになりそうだ。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha