「もう1度スケートと真っすぐ向き合いたい」フィギュアスケート女子の鈴木明子(26)=邦和スポーツランド、愛知県豊橋市出身=は原点回帰を期して今季を戦う。2009-10年はバンクーバー五輪入賞など充実のシーズンを過ごしたが、昨季は世界選手権出場を逃すなど失意の1年に。引退も頭をかすめたものの情熱は尽きず、初戦となるスケートカナダ(28日開幕)で新たな一歩を踏み出す。 (鈴木智之)


コーチらに「もうやめたい」と漏らしたのは昨年12月、全日本選手権の直前だった。ショートプログラムで7位に終わると、フリーでも挽回できず総合4位。世界選手権の出場枠から漏れた。


昨季はずっと迷いが心に巣くっていた。五輪が終わって張り詰めていたものが緩んでいるのに、それでも頑張らなければと余裕がなくなった」。心とからだが一致せず、もがけばもがくほど深みに。大学時代、重圧などから摂食障害に陥った時期とも違う「前を向けない状態」に追い込まれた。


引退を思いとどまったのは「スケートを嫌いなまま終わりたくなかったから」。このオフは単身で1ヵ月ほど米国で練習して自らと向かい合う一方、名古屋のリンクでは子どもに交じって滑りながら技術を基礎から見直した。


過去2年はミュージカルを題材にしたフリーの曲も昔から好きだったというクラシックの「こうもり序曲」に。「軽やかで、シンプルに自分の滑りを見せられる」。すべては初心に帰りたいという気持ちから。「昨季は言われたことをやるので精一杯。今は、自分の意見を出しながら積極的に練習できている」と手応えを話す。


目標はまず2年ぶりの世界選手権出場。「そこで初めて表彰台に上がれたら一番いい。でも、わたしにとっては、あの舞台でスタンディングオベーションをもらうことが最高の到達点なのかもしれません」