http://hochi.yomiuri.co.jp/column/shirota/news/20110531-OHT1T00187.htm


世界選手権 ペア総評

 アリオナ・サフチェンコ&ロビン・ゾルコーヴィ(ドイツ)は、SPをノーミスで演技。曲は東京からモスクワへの開催変更となってピッタリな「コブラチカ」。2位と好発進した。フリーを迎えるにあたり、追いかける位置にいた方が伸び伸びとやれることが出来るのが利点だ。というのも、彼らは少し硬いところがあるし、流れの中で要素をやる流麗さはない。得意の要素をきちっと決めてスポーティフルにやるのが特徴だからだ。フリーの曲「ピンクパンサー」は色々なショーで、彼らのトレードマークのように何度も試みているから、見ていて失敗するように見えないところが彼らの強み。今シーズンは負け知らずで、出場大会は全て優勝。世界最高得点で3回目の世界一に輝いた。ドイツにとっては歴史に残る成績だったろう。


 ロシアの新ペアのタチアナ・ボロソジャル&マクシム・トランコフは、ウクライナからの移籍し、結成わずか1年足らずでロシア選手権を制覇した。元々、別々のペアで活躍し、世界のベスト6に入っていたほどの実力を誇るペアの解散から得たカップルだけに、期待がかからない訳がない。これもソチ対策か? とも思ってしまう。ペアとしての要素には才能はあると思うが、いまだ少しの時間が必要かと感じていたが、スロージャンプやツイストリフトなど、ダイナミックの中にもロシアンフレーバーがたっぷりと入った「ロミオとジュリエット」を演じ切りった。ユニゾンを学び終えた時は…どの組もかなわないのではないかと思わせるような出来でSP3位、フリー2位、総合2位で銀メダルを獲得。来シーズンになおの期待がかかって来るだろう。


 ペア大国の中国は少々、下降気味だ。パン&トン組は高いリフト、素晴らしいスロージャンプ、ディビット・ウィルソンの振り付けが的を得ていてSPは1位と好発進。しかし、追われる身は厳しく、フリーではミスが続き完璧に近い形で演技したカップルには及ばず3位と沈んだ。


 メダル圏内と期待がかかる川口悠子&アレクサンドル・スミルノフ(ロシア)は慎重過ぎたのか、思わぬところでスミルノフが転倒、SPは5位発進とフリーでは最終グループで滑れなくなってしまった。SPは少しのミスも許されない。プログラムが優雅で氷上を2人が舞う感じがとてもよかっただけに、転倒は惜しい。フリーは「月の光」。美しさが漂うプログラムは2人を優雅に見せ大人の演技力の域に入って来たと感じた。後半のスロー3回転ループで川口が惜しくも転倒。その後はばん回を狙ったが…。4位とメダルには届かなかった。


 日本から出場の高橋成美&マーヴィン・トランは、確実性がまだまだで、フリーで2回の転倒などミスが出た。世界の強豪を相手に十分健闘に値する演技だったが、SPは6位、フリー10位。総合9位で今シーズンを終えた。