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【フィギュアスケート】各国選手権、欧州勢の状況 ~フランス男子編


12月中旬から末にかけて、欧州各国でフィギュアスケートの国内選手権が行われた。「ナショナル」は国内ナンバーワン決定戦であると同時に、ほとんどの国では来る欧州選手権や世界選手権の出場権争いも兼ねている。グランプリシリーズ等では未だ本調子ではなかった選手たちも、揃って今大会に照準を合わせてきたようだ。


■フランス男子――新旧交代は一旦お預け


長年フランスのフィギュアスケート界を支えてきたブライアン・ジュベールは、昨季のバンクーバー五輪で「まさか」の16位に終わった。なんとかモチベーションを立て直し3月の世界選手権では銅メダルを獲得したが、フランス国民の視線はすでに26歳の元世界王者から20歳のフローラン・アモディオへと移りつつあった。


実際、12月中旬に行われた国内選手権で、優勝大本命に上げられていたのはアモディオのほうだった。なにしろアモディオは今季から「優勝請負人」モロゾフ氏に師事し、生まれて初めてグランプリファイナルへも出場している(結果は6位)。片や26歳とすでにベテランの域に入った元世界王者は、かつてのコーチ、ヴェロニク・ギヨンを呼び戻して再出発を誓っていた。しかし中国杯では「未だ調整不足」で4位、地元フランス杯ではショート5位と出遅れた後に胃腸炎でフリー棄権。1年前はジュベール不在の中でアモディオがナショナルを勝ち取ったが、今年こそは、上昇気流に乗る若手が直接対決でトップを追い落とすのでは……と予想されていたのだ。


ところがショートで、アモディオが大きなミスを犯してしまう。3回転フリップで氷にお尻をつく転倒をし、直後にはステップの入りでふらつき転倒。さらには気持ちが途切れてしまったのか、2度目の転倒後にはスケーティングを一瞬やめてしまったことも。結果は3位。GPファイナルが開催された北京から帰仏してわずか4日後の大会であり、「少し疲れていた。時差もあったし……」と本人は告白している。翌日の「戦争を挑んだ」というフリーでは、入りの3回転アクセルでミスしたものの、気持ちをしっかり立て直して好演技。マイケル・ジャクソンばりのステップではきっちり会場をわかせ、2つ目のスピンではレベル4の高評価を得て、最後は思わずガッツポーズが飛び出したほど。最終成績は2位に終わったものの、フリーではきっちり1位を取り、国からの期待を大きく裏切ることなく大会を終えることに成功している。


一方、ショートでダントツ首位に立ったジュベールは、フリー直前には酷くナーバスになっていた。ストレスとプレッシャーに弱いと長年叩かれてきたが、この日は「パーフェクトな演技を求めることはやめよう」と気持ちを切り替えることが出来たそうだ。4回転を3回転に変更し、できる範囲でシンプルかつクリーンな演技をこころがけたのが功を奏したとのこと。こうして7度目のフレンチチャンピオンの座を手に入れた。


「7度目の国内タイトル。特別な味がするね。そしてボクが今でもフランスのトップなんだ、と証明できた。この地位を簡単に譲ったりはしない。若手がボクからトップの座を奪いたいと躍起になるのは、もちろん、当然のことだけどね」


失った自信を取り戻しつつあるジュベールが最終的な目標に上げているのは、2012年春にフランスのニースで開催される世界選手権。そのときまでフランスのトップを走り続けることができるか。まずは後輩のアモディオと共に、1月末にスイスで開催される欧州選手権へと乗り込む。


宮本 あさか