「ウォンテッド」 2008年公開

仕事が出来ず、うだつの上がらない会社員ウェスリー。
ある
日、いつものように自分のパニック障害の薬を買っていると、

謎めいた美しい女性・フォックスに声をかけられた。

と同時に、店内にいた怪しげな男から発砲を受ける。
なにがなんだかわからないまま逃げ惑うウェスリーを、
フォックスが無理矢理車に載せて猛スピードで走り出す。
後ろからは店内にいた男がトラックを強奪して、
またもや発砲しながら追い掛けて来ていた。

フォックスは見事なハンドルさばきで、

息も切らせぬカーアクションを展開させ

何とか男を巻くことに成功した。
逃げる途中で車がジャンプしたときのショックで、

気を失っていたウェスリーは見知らぬ場所で目を覚ます。
周りにはフォックスの他に、目付きの悪い男が数人いた。
そこへ組織のリーダー・スローンが現われ、自分たちは
暗殺組織の

メンバーであり、ウェスリーが生まれてから7日間で姿を消した

彼の父親も、同じ組織に属していた。と告げる。

そしてフォックスは、父親の形見だという銃をウェスリーに渡してきた。
さらに「足元のごみ箱に群がっている蝿の羽を撃て。」

と、冗談にしかとれないような発言をした。
思いもしなかった言葉に動揺し、躊躇しているウェズリーの耳元に、
「3秒以内に撃たなければ頭を吹っ飛ばす。」という声が響く。

別の男が後ろから銃を突き付けていたのだ。

後頭部に突きつけられた銃に焦りながらも、

蝿へと視線を移し、神経を集中させるウェスリー。

すると驚くべきことに、蝿の動きが段々遅くなるではないか!
そして無我夢中で銃を連射するウェスリー。
撃ち終わってぐったりするウェスリーの前に、

スローンが何かを拾って持ってきた。

なんと彼の手の平には、羽をもがれてばたつく蝿がいたのだ。

監督はティムール・ベクマンベトフ。「ナイトウォッチ」に続き

本作が2作目の映画となる。

出演はウェスリーにジェームズ・マカヴォイ。

組織の女性・フォックスにアンジェリーナ・ジョリー。

組織のリーダー・スローンにモーガン・フリーマン。

他にテレンス・スタンプなどなど。


映像はCGを駆使して、かなり派手でインパクトがあり楽しめました。
後半の銃撃戦100メートル走も斬新で面白かったです。

テンポも気持ちいいぐらいのペースで進みます。

主人公はたいした迷いもなく、暗殺者の道を選び、

様々な訓練を受けて着実に組織の一人となります。
映像的には申し分ないのですが、ツッコミドコロ満載です。
第一に彼らがやっていることは正義の暗殺なのでしょうか?
関係のない一般人をあんなに巻き込んでいる上に、

発砲を受けたときの監視カメラに、銃で応戦する姿を撮られて、

そこは裏から手を回して証拠隠蔽するのかと思いきや

静止画像(顔のアップ)は思いっきり新聞に載ってるし。

暗殺者どころか、ただの殺人未遂の犯罪者でしょう。あれじゃ。
組織に入って訓練を受け、自らの制御もできてるはずの
主人公は、

後半の列車内のシーンで、一般人が大勢見守る

敵を追いかけながら、なりふり構わず銃振り回すし。

それから個人的に不快感を覚えたところがありました。

訓練のためと言って、死体を吊り下げて撃つ必要性があるかな?と。
どこからやってきた遺体なのかもよくわからないし。

人間の尊厳を無視してる気がしてなりませんでした。

死体を撃つ理由として、人を撃つ感覚も知っておかなければ。

と言ってましたが、本当にその感覚を得たいのならば、

それこそ生きている人間を撃たなければ得られないんじゃないの?
全体的にキャラクターの設定が浅いなぁと。
アクションや映像だけで魅せるのならば

それでいいかとは思いますが、物語があるからタチが悪い。

そもそも今まで一介の会社員だった人間が、

顔も覚えていない薄情なあなたの父親は、

実は凄腕の暗殺者だったんですと言われて、

「あぁそうですか、じゃあ僕も。」ってなりますか?

まず父親に対する反発や疑念が生まれてくるはずじゃないかと。

自分を捨てて出て行った理由を誰かに聞くわけでもなし。

そもそも、はなっから他人を信用しすぎでしょう。

「私は父親の同僚です。」と言って近づいてきた、見るからに

危ない人たちには、小学生だってついていきません。

最初から組織の一人という設定の方がもっと楽しめたかも。


本物ではないと思いますが、ネズミがかわいそうでした。

誰かの“生”のためならまだしも、“道具”として死ぬのは嫌だなあ。