「赤い文化住宅の初子」 2007年公開
高校受験を控えた中学3年生・初子は兄と二人暮らし。
母親はすでに他界して、父は借金を残して蒸発してしまい、
毎日の食費を確保することに苦労するほど、
二人の生活はとても苦しいものだった。
初子はなんとか生活費を稼ごうと、
安い自給にも耐えて、ラーメン屋でバイトをする。
そんな初子の苦労を知ってか知らずか、
電気代を使い込んでしまう兄の身勝手ぶり。
当然、家の電気は止められてしまっていた。
さらに悪いことは続くもので、
ドンくさいし、暗いからと言われ、
ラーメン屋もクビになってしまう。
そんな状況の中でも初子は“一緒の高校へ行く”という
同級生の三島くんとの約束を果たすべく
懐中電灯や蝋燭の光を頼りに勉強を続けるのだが．．．。
監督はタナダユキ。「月とチェリー」や「百万円と苦虫女」
などを監督の他、「さくらん」の脚本なども手がけている。
主演は東亜優。「トカゲ飛んだ？」や
今作のスピンオフ作品「16」などに出演。
初子の兄に塩谷瞬。「忍風戦隊ハリケンジャー」で一躍ブレイクし、
「パッチギ」や「龍が如く 劇場版」、「像の背中」などに出演。
他に坂井真紀、浅田美代子、大杉漣、
鈴木砂羽、江口のりこなどが出演。
まぁーーー暗いです。暗いこと深海のごとしです。
親もなく、お金もなく、たった一人の兄はいつも八つ当たり。
あまりの不幸ぐあいに、観ているこっちが辛くなります。
“一緒の高校に行く”という三島君との約束も
今の生活を考えて、断念することになる。
周りの大人たちが、映画とは思えないぐらい、
中学生に初子に冷たい人ばかりで、どんどん不幸を連れてきます。
学校の担任は、これ絶対クビだろ！
というほどの生活態度に問題ありの先生。
(坂井真紀のある意味体当たり演技)
信仰宗教まがいの女性が近づいて来るわ、
突然現れた父親によって、生活はさらに
悪い方向へもっていかれるわで最悪です。
こんな状況でぐれなかった、初子の頑ななまでの
精神力は見上げたものです。
そして残された唯一の希望は、三島君と交わした
「いつか結婚しよう。」という約束だけになってしまう。
その約束が最後に光を増して、初子のこころを照らします。
主演の東亜優と塩谷瞬の演技が光ります。
反発し合いながらも、絆を感じさせる兄と妹。
「赤毛のアン」と主人公の人生を照らし合わせたところは、
この作品の面白いところだと思います。
