大器晩成という言葉は、老子思想由来のようで、実は本来の意味合いとは全く違って、一人歩きしてしまった言葉らしい。いつ、どこで解釈が間違ってしまったかは不明。けれども、私はこの“大器晩成”という言葉が好き。この言葉にどれほど多くの人が慰められ、救われたかも知れない。30代の前半の頃友達が「あなたは、78歳から幸せになります」と言われて、カンカンに怒っていたことがあった。友達に言わせれば、「そんな年になってから幸せになるって言われて、何が楽しいわけ?!」ということで。また、20代の頃、自分の父親ので借金を絶えず肩代わりさせられていた会社の同僚に付き合って、占いについていった時の事。「今、あなたは、渡り鳥が長い距離を力を振り絞って、渡っている途中のような状態です。先はまだまだ長く、辛い状態の真っ只中です。」と言われていたことがあり、ちょうど、今くらいの季節で、日の暮れもどんどん早くなり、薄暮れの淋しい空気の中、かける言葉が見つけられなかった。たった1つの言葉が、人を奈落の底に突き落とす事もあるし、その言葉を頼りに明るい方向にたどり着く糧にして、本当に上向く事がある気がする。前例の2つの事柄も、78歳という言葉な代わりに“大器晩成と置き換えていたら、又、2番目の事柄も「でも、あなたは大器晩成ですね。頑張ってください。」が付け足されていたら、どれほど本人にとって言われた言葉の印象が違っていただろう、と思う。本来の出所とはかけ離れた言葉であったしても、やっぱり、明かりを灯してくれる一言。