スペインは2月頃には新型コロナウィルスの大流行があり、一度収まった後7月の後半にもう一度ピークを迎えている。今はピークアウトして感染者数は大分下がってきている。日本のデルタ株の流行もそろそろピークアウトしたようで、感染者数は下がりつつある。
マスコミは判断基準が施設によってまちまちな「重症者数」が増えていることばかり報道しているのだが、、実は死者数は第4波の時は1日100人近くだったのが、今回は1日50人程度でしかなく、ワクチン接種の効果は大きい。
[見所]
今月半ばにamazon.esに4枚の英語字幕付きスペイン版Blu-rayを注文したが、これが最後の一枚。4枚中3枚がフランコ独裁下のスペインの話で、独裁が終わって半世紀近く経つのだが、未だに内戦の傷跡が深いのが良くわかる。
本作はスペインの著名な哲学者、詩人ミゲル・デ・ウナムーノの晩年を描いた作品で、彼は最初は右派の反乱軍を支持し大金を寄付するが、フランコ将軍が総統になる頃には、反乱軍が敵を見なした人々を裁判無しに処刑するようになり、ウナムーノはひどく心を痛めるようになる。
原題:Mientras dure la guerra 英題:While at War スペイン版Blu-ray
スペイン・アルゼンチン映画 107分(スペイン劇場公開:2019.9.27)
邦題:戦争のさなかで(日本劇場公開:2019.10.13 東京国際映画祭)
ジャンル:ドラマ
監督:アレハンドロ・アメナーバル
脚本:アレハンドロ・アメナーバル、アレハンドロ・エルナンデス
音楽:アレハンドロ・アメナーバル
撮影:アレックス・カタラン
編集:カロリナ・マルチネス・ウルビナ
[出演]
カラ・エレハルデ(ミゲル・デ・ウナムーノ、哲学者、詩人、サラマンカ大学終身学長)
エデュアルド・フェルナンデス(ミリャン・アストライ将軍、フランコ将軍のスポークスマン的な人物)
サンティ・プレゴ(フランシス・フランコ将軍、スペインの独裁者)
ルイス・ベルメホ(ニコラス)
ティト・ヴァルヴェルデ(カベナラス将軍、フランコの総統就任に反対した男)
ルイス・サハラ(ココ・アントリーノ、キリスト教教授、プロテスタント)
カルロス・セラノ=クラーク(ヴィラ・サルバドール、文学教授、ウナムーノの教え子)
[ストーリー]
1936年7月18日、スペイン中部の学園都市サラマンカ、内線が勃発しスペイン陸軍は非常事態宣言を発する。スペインは5年前に共和制に移行しており、この年の選挙にて左派連合が辛勝し、人民政府が樹立されたが、これに対抗した陸軍を主体とした右派が反乱軍を結成したのだった。
サラマンカ大学の終身学長で政治的発言力があったミゲル・デ・ウナムーノ(カラ・エルハルデ)は、スペインは統一されるべきだとの考えから反乱軍を支持し半年分の給与を寄付する。
反乱軍ではアフリカ軍団の英雄フランシス・フランコ将軍(サンティ・プレゴ)が他の将軍の支持を取りつけ、総統に就任する。ウナムーノの思惑とは違い、フランコ率いるファシスト党は力で国民を抑え、反対派は裁判無しに処刑するようになる。
やがてウナムーノの親友であるキリスト教教授アントリーノ(ルイス・サハラ)と文学教授のサルバドール(カルロス・セラノ=クラーク)も左派的思想を理由に無理矢理拘束されてしまう。フランコ将軍と友人関係にあったウナムーノは将軍に友人たちを開放するように直訴するが、左派も同様のことをしているとの理由で、ウナムーノの願いは却下されてしまった。
[感想]
著名なスペインの思想家、哲学者、詩人であったミゲル・デ・ウナムーノの晩年を、フランコ将軍と対比させながらじっくりと描いた作品。
最後は有名なエピソードで、ウナムーノは反乱軍の集会で、自分の命を賭けて、平和的スペイン統一を訴える。
フランコ将軍は独裁者とのイメージが強いが、総統になるまではカリスマ性は余りなく、優柔不断な人間として描かれている。
[補足]
第二次世界大戦の最中は、フランコ将軍は最初は中立、途中で枢軸国寄りの不戦主義を宣言、枢軸側が敗勢になってからは再び中立を宣言している。これに対して連合軍側は何とかしてスペインが枢軸側として参戦しないようにと外交努力を続けた。
フランコ将軍がうまく立ち回ったことで、第二次世界大戦終戦後もフランコ独裁体制は維持され、1975年フランコが死亡するまで独裁体制は維持される。
[おすすめ]
スペインの近代史を知る上ではとても参考になる映画だが、この映画を見る前に一通り
フランコ将軍についての調べておかないと、何が何か判らなくなる可能性が高い。
英語版劇場予告編: 『戦争のさなかで』予告編 | While at War - Trailer HD
[ソフト]
スペイン版Blu-ray
スペイン語音声、スペイン語・英語字幕
画質・音質とも良い
現時点では日本版ソフト、配信ともない