「ゴムつけるときもあったけど」

 カヨがテッシュの箱を握ったままつぶやく。

「けど?」

 できるだけ感情をこもらないように話したつもりだ。

 カヨは19歳。

 17歳の時にクリニックにやってきた。

 学校の勉強についていけないし、やる気が出ないという主訴だった。

 発達検査のオーダーがありそこで出会った。

 知的水準は学校にほとんど行けていないのに優秀だった。

 とても周りへ気をつかう子だ。

 最近、3回目の堕胎をしたようだ。

「つけるの嫌がるときがあって」

 また、一枚テッシュを手に取る。

「強制すると嫌われそうで…」

「嫌われるのが怖い?」

「うん、嫌われたくないから」

「そうかぁ」

 また、一枚テッシュを手に取り、今度は鼻をかむ。

「ごめんね」

「うん…」

 あいまいに返事をする。

「テッシュがなくなちゃうね」

 変なところ気をつかう。

 テッシュをテーブルに置く音がする。

「体は大丈夫なの?」

 また、同じことを聞いてしまった。

 自分でも動揺しているのがわかる。

「うん。今回は12週だったから形がわかって」

 肩を震わせ始める。

 帰る言葉が見つからず沈黙になる。

 できたのはテッシュケースをカヨに差し出すことだけだった。