「どうしたらいいのかな」

 カナの顔が上がる。

 目は赤く充血している。

 カヨは19歳。

 17歳の時にクリニックにやってきた。

 学校の勉強についていけないし、やる気が出ないという主訴だった。

 発達検査のオーダーがありそこで出会った。

 知的水準は学校にほとんど行けていないのに優秀だった。

 とても周りへ気をつかう子だ。

 最近、3回目の堕胎をした。

 自分のしたことの重さがわかっている。

 どんな言葉をかければいいのかわからない。

「へへっ」

 また、鼻をかむ。

「彼はどうした」

 これまでの2回は妊娠がわかるとすぐに逃げてしまった。

「今回の人は逃げずに費用を半分出してくれた。へへっ」 

 言葉のどこかに自慢げだ。

「病院には?」

「ママと行った」

 急に声がしぼむ。

 カヨは母親一人に育てられた。

 父親は誰だがわからない。

「そうかぁ。ママに怒られた?」

「全然」

 ふいに顔を上げる。

 目は真っ赤に充血している。

「優しかった。だから余計に」

 言葉途中に突っ伏して泣きじゃくる。

 何もできない自分をごまかすようにカヨの頭に手が伸びる。