新しい技術を載せた人工流れ星で技術革新を起こす

宇宙ビジネスの現在と未来(5)技術革新への挑戦

対談 | 岡島礼奈柳川範之

情報・テキスト

未知なるものへの好奇心が人類を新たな挑戦に向かわせ、結果としてそこにビジネスチャンスが生まれる。そう考えるなら、宇宙ビジネスにチャレンジをする人たちと共に働き、応援することが、人類に新たな可能性をもたらす一歩となると言えるだろう。(全5話中第5話)
※インタビュアー:柳川範之(東京大学大学院経済学研究科教授)

時間:11:47
収録日:2019/09/10
追加日:2019/12/12

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≪全文≫

●オリオン座よりも明るい都会の夜空の流れ星


柳川 これからでいうと、広い範囲に流れ星を見せて、そこで利用料といったものを頂くということだと思いますが、具体的なプラン、あるいはそうした計画は進んでいるのでしょうか?

岡島 自分たちで売っていこうというものは今、その計画を策定しているところです。一方で、海外からいろいろな問い合わせがきています。例えば、こういう式典で使いたいとか、新しくオープンさせるときに流してほしいとか、面白いところでいうと、娘の誕生日に流してほしいとか、プロポーズに使いたい、などです。

柳川 今の話だと場所が限定されるというイメージですが、「この地域に流れ星を降らせたい」というのは、どのくらいコントロールできるものなのですか?

岡島 例えば、「ピンポイントで東京タワーの真上、斜め45度に」というのは今の精度では難しいのですが、東京タワーと流れ星という絵が撮りたいという要望であれば、それは可能です。

柳川 なるほど。僕も何回か流れ星を見たことがありますが、よく見ていると、ひゅっと流れるくらいで、ばっとたくさん降ってくるところはなかなか見たことないのですが……。

岡島 ないですよね。私もありません。

柳川 数や量というのは、どのくらいのイメージなのですか。

岡島 まず、1号機目、2号機目は、1回のショーで5粒から20粒流せるという計算になっています。一気に20粒は難しいのですが、20粒が次々に出てきたり、一度に数粒出てくるというのは可能です。

柳川 素人的な質問ですが、東京などの都会では周りが明るいため、星が見えにくくて、山奥のほうが星や流れ星は見えやすいとも言われますが、都会でも見える明るさになるのでしょうか?

岡島 マイナス一等星の明るさになることが計算で分かっています。東京でも冬にはオリオン座は見えていますよね。

柳川 見えています。

岡島 オリオン座よりも明るいのです。

柳川 それは目立つ明るさですね。

岡島 ですので、見えると思います。
 

●無数にあるコラボレーションの可能性


柳川 順調にいけば、人工衛星をいくつも打ち上げ、何回かやれるようになっていくということですか?

岡島 そうですね。1号機目は400粒積んでいるので、一度に20粒流すとして、20回分のショーができる計算になります。3号機目以降は1000粒とか2000粒ほど搭載できるように計画していて、搭載数をどんどん増やせたらいいなと思っています。

柳川 流れ星だったり、データを集めるところだったり、将来的には他の産業、他の企業との連携など、いろいろなコラボレーション先があると思うのですが、すでに話があったり、考えていらっしゃることはありますか?

岡島 コラボレーションの種類にもよるのですが、例えば、エンターテインメント系だと、シティープロモーションでコラボレーションしましょうというお話があったり、データの話でいうと、研究者の方からの引き合いが今は多いですね。ある部分のデータを一緒に研究したいという要望が世界各国からあります。

 他には例えば、モノをつくっていくという方向のコラボレーションもあると思っていて、実は日本の大手のメーカーさんと、次世代の人工衛星をつくりませんかという話が進んでいたりします。
 

●「枯れた技術」に新しい技術を載せた人工衛星で革新を起こしたい


柳川 人工衛星は、今も技術革新がある分野なのですか?

岡島 それがまったくない分野なのです。

柳川 そうなのですか。

岡島 私も自分でやってみて初めて知ったことなのですが、人工衛星といえば、最先端の技術を使っていると思いますよね?

柳川 そうですね。

岡島 でも、人工衛星は1回打ち上がってしまうと宇宙空間ではなかなか修理できません。そのため、何年も前から使っている、何十年も前から使っている実績のあるものが優遇されやすいのです。ですから、20年前から変わっていない技術などが集まっていたり、ロバスト性が求められるので、つくりも非常に頑丈になっています。

柳川 新規性ではないのですね。

岡島 「枯れた技術」というと、私たち一般の人からするとつまらない感じがしますが、実証に実証を重ねて何の問題もない技術のことを宇宙に関する分野では「枯れた技術」と呼ぶのです。ここ(私たちの人工衛星)には今、「枯れた技術」がたくさん詰まっています。私たちが思っているのは、流れ星というコンテンツで人工衛星をぽんぽんと打ち上げられるようになりたいということなので、そこにさらに新しい技術を載せ、どんどん実証していって、革新を起こしていこうとしています。

柳川 人工衛星という分野でも革新が起こるのではないかということですね。

岡島 これからどんどん革新が起きる分野だと考えています。

 

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