それは遥か昔のこと。

日本神話の最高神である天照大神の弟スサノオノミコトは、どうやらやんちゃな性格だったようで、神々の住まう場所である高天原を追放されてしまいました。

 

追放されたスサノオが降り立ったのは出雲の地。

そこで泣いている老夫婦とその娘、美しい奇稲田姫(くしいなだひめ)に出会います。

 

何故泣いているのか問いかけると、恐ろしい大蛇であるヤマタノオロチに姫が食われてしまうからだという答えが返ってきました。

老夫婦と姫を哀れに思ったスサノオは、姫との結婚を条件にヤマタノオロチを退治することにしたのです。

有名なヤマタノオロチ伝説ですね。

 

ヤマタノオロチとは八つの谷と八つの谷を覆うほど巨大な八頭八尾の龍と言われています。

諸説ありますが、これはかつてたびたび氾濫して洪水を引き起こしていた斐伊川を神格化したものと考えられているようです。

 

そんな神話が残る、歴史ある出雲の国。

時は流れて平成の世、出雲の山奥にヤマタノオロチを彷彿とさせる巨大なとぐろが出現しました。

 

奥出雲おろちループ。

 

広島と島根を結ぶ国道314号線のループ線です。

ループの直径は約200mもあり、その巨大さに圧倒されます。

 

なんで道路がとぐろを巻いているのでしょうか?

それはこの辺りが険しい山々に囲まれているからです。

Google Mapさんから地図を拝借…
国道314号線と並走するようにJR木次線が走っており、奥出雲おろちループは三井野原駅出雲坂根駅の間にあります。
この両駅、直線距離では約1.3kmしか離れていないのですが、なんと標高差は162mもあるのです。これはだいたい50階建てのビルの高さに相当します。
そのため、直線で結んでしまうと斜面が急になりすぎて、車でも登れない激坂になってしまうので、距離を伸ばしつつ高度を稼ぐために巨大なループ線が誕生したのでした。(青矢印)
鉄道は車よりも勾配に弱いため、壮絶な回り道をした挙句にスイッチバックするという涙ぐましい経路を辿っています。(赤矢印)
それでも鉄道にはしんどい勾配で、雪が多いとスリップする危険があるため、冬は2か月くらい運休することもあるらしいです…

 

さらにこのループ線はなんと2重となっており、まさにとぐろを巻く大蛇の如しです。


ループ線の最上段に位置する三井野大橋。

緑の中に鮮やかな赤が映えます。

 

タイミングよく木次線の列車がやってきました。

この区間の木次線は1日3~4往復しか列車が来ない、西日本でも屈指の弩級ローカル線なのでラッキーですね。

 

奥出雲おろちループの展望台…といっても、ここからは木々が邪魔で全然見えません

ここの駐車場に車を止めて、周りを少し散策するのが良いかと思います。

 

ループ線の中。

全部の道路がつながっていると思うと面白いです。

 

。ループ中段から上段と下段を臨みます。

 

2360m走ってようやく下段に降りてきました。

 

下段から見上げた三井野大橋。

あそこから降りてきたと思うと感慨深いですね。

 

かつて人々を苦しめた大蛇は現在、人々の生活のために活躍してくれています。

 

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島根県 奥出雲町 奥出雲おろちループ

JR木次線の三井野原駅から徒歩15分程度で三井野大橋に着きます。

が、列車本数が超絶に少ないので、レンタカーなどを利用した方が良いでしょう。

私の場合は輪行した自転車ですね。

道の駅美術館などもあるので、ドライブついでに立ち寄ってみてはいかがでしょうか。