新宿、歌舞伎町へ到着し、ミンと私はフラフラとさ迷った。

「ここが有名な歌舞伎町一番街かぁ!!」

「お見合いパブやって!!」

ミンは精力的に動き回る。
クルクルと変わる表情。
ナンパの男を蹴散らす。
私は‥‥飽きていた。


さて、終電がなくなったのでどうしようかと思案しながらドン・キホーテの前に差し掛かった瞬間、
前方から突然とおせんぼされた。

「ちょーっと待って!?」

黒いリラックススーツ、第三ボタンまで開いた白いワイシャツ、金髪に近いオールバックの背が高い男の人と、
ダブルの黒いスーツに白いワイシャツ、ネクタイをしめた若い男の子。

ホストだ。
男の人の方がとおせんぼをし、声をかけてきた。

男の人「これからどっか行くの?」

ミン「終電がないから駅で寝ようと思ってるん。」

男の子「うちの店に来ればいいじゃない!!」

私「だって高いですよね?
私たち、お金がありませんから。」

男の人「始発まで5千円で居れるよ!!!」

私「そんなこと言っても、結局高くなるんですよね‥‥
それに本当にお金がありませんから。」

男の人「じゃあ奢るよ!!」


ミンをちらり、と見れば、
新人らしい男の子と楽しげに話していた‥‥‥‥
相変わらずな日常。
Kさんの件から職場でギクシャクし始め、Iさんにも手のひらを返したように陰湿にいびられた。
もう、死んでしまいたいと思った。

週末、土曜日になると元カレがやってくる日々。
溺れるように、逃げるように元カレに甘える。

平日は、ひとつ年下で東京に出てきたばかりのミンという看護師仲間と夕食を共にした。

ひとりで居たくなかった。
H市はまだ寒くて、テレビの嫌いな私の部屋は静まり返っていて、空しくなった。


そんなある日、ミンが
「もこさぁん☆うち、歌舞伎町に行ってみたいんやけど♪」
と言い出した。
東京観光をご希望らしい。
H市から新宿までは電車で一本。
快速に乗れば30分で着く。
日曜日が休みだった事もあり、私とミンは仕事後に出掛ける事にした。
ジーパンにパーカーで出掛けようとした私に、
「そんな恰好ではあかんっっ(`д´)ノ」
とミンが怒り、寒いのにワンピースにカーディガン、ミュールをミンに借りて出掛ける事になった‥‥
元カレは私の様子がおかしい事にすぐに気付いた。


『もしもし?なんかあったの??』



「‥‥助けて。会いたい。」




この時の私の行動は、今振り返れば悪魔だ。
小悪魔なんて可愛いものではない。

元カレは私の事を病的なほど愛してくれた人だった。
そう、まさに病気。
私はそれが嫌だった。

だから最低な別れ方をしたのに。
結局私は元カレに自分が辛くなると甘えたんだ。

仕事中だった元カレは夕方やってきた。
わざわざ隣の県から2時間もかけて、だ。

縋り付いて泣きながら甘えた。
元カレはただ受け入れてくれた。
翌日仕事が休みだったので、一晩中ずっと一緒にいた。
抱いてくれとせがんだのは私だ。
無理矢理されそうになった恐怖感を、馴染んだ肌で癒したかった。



「なぁ‥‥俺達もう一度やりなおさないか?」

元カレの言葉に涙を流しながら頷いた‥‥





読者様が二人、新たに来て下さいました!!
こんなblogにありがとうございます☆
もうしばらく、私の8Times入店前の暗ぁぁぁぁいお話にお付き合い下さいm(__)m


moco
朝6時。
Kさんの隣りで眠れずに過ごした私は、活動を始めた。
本当は風呂に今すぐ入りたい。
でも今は、今はダメだ。


私の葛藤にまるで気付かず爆睡しているKさんに殺意を覚えながら、
私はなんとかこのロクデナシを追い出す事を思案した。


取り敢えず、飯をつくる事にした。
野菜を炒めてあんかけにする。
それをごはんにのせて、あとは味噌汁。

出来上がったところでKさんを揺り起こす。

「ごはんを作ったのですが食べますか?」
「うぅ‥‥ん(´ω`)」

……なぁにが『うぅ‥‥ん』だこのクソジジイ!!!

怒りを堪えて揺り起こす。
ご飯を与えながらKさんはしきりに、
「昨日は飲み過ぎた。
何も覚えてないんだよなぁ。」
と言いまくっていた。


はあぁ?


ああそうですか、と機械的に答えて、8時には叩き出した。



鍵を締めたら一気に涙が出てきた。
風呂に入り泣きながら無心で体を洗った。
ゴシゴシと赤くなるくらい…



誰かに助けてほしくて、気付くと一方的に私が振った元カレに電話をしていた。

Thururururu‥‥‥

ガチャ。

『………よぉ。』

声を聞いた瞬間、涙がまた関を切ったように出てきた‥‥‥‥

職場はすごく封建的な所だった。

丘の上にある精神科病棟。

 卒業したてなおのに就職せず一年もブランクのある准看護師を雇っているというだけで病院のレベルは分かってもらえると思う。

まとまってお金が稼げればいいと思っていたので別にそれはかまわなかった。

 ただ・・・内部で働いているスタッフが新人に冷たい。

それは入社し働き初めて4日で痛感した。

私はその土地の人間ではなかったし、スタッフも勤続50年なんてツワモノもいて一種独特の雰囲気をかもしていた。


 そんな時、ベテランの男性准看護師であるKさんが

「○○さん(私)、今日メシでも行こうか?」

と声を掛けてきた。

 疎外感を感じていたので嬉しかった。

 

いま考えると浅はかだったのだが、男性とはいえ父親と同じくらいの年齢だったし結婚もして小さな子供もいると聞いていたので


(何かしてくるなんて考えられないしね)


などと根拠のない安堵感で仕事が終わってから一緒に居酒屋へ行った。

 だいぶお酒も入り、いい感じに打ち解けてきたところでKさんから

「もっと周りと溶け込むように努力すべきだ。」

と先輩としてのアドバイスをうけた。

 もう記憶としては定かではないのですが、色々と自分でも痛感している事(今になって思うと若い時独特の独りよがり)を指摘された。

 一人暮らしを始めてまだ1週間も経っていない時期だったので人寂しさもあり、Kさんの前で私はボロボロと涙を流した。

それがいけなかったのかもしれない・・・

Kさんは酔って、当時の私にとってとんでもないことを言い出した。


「ヘルパーのⅠさんは俺の彼女なんだ」



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ?


ピタリ、と涙が止まった。

Kさんは一体なにを言っているのだろうか?

ⅠさんもKさんも結婚している。

ましてや同じ職場同士、しかもⅠさんは私の母親と同年代だがすごく可愛らしい人だ。

疎外感のある職場の中で、私にもすごく良くしてくれる数少ない一人だった。

 申し訳ないがKさんと付き合うなんて考えられない。

ここはドラマの中じゃない、ごく普通の場所でしょう?

失楽園じゃあるまいし、アホらしい。


あぁ、わかった。冗談か。

と私は判断し、笑って

「そんなこと言ってるとⅠさんに怒られますよぉ~(笑)」

と受け流した。

「いや、ホントなんだって!」

「またまた~(笑)」

私は本気にしなかった。


さらに飲み続けているとKさんの様子が大分酩酊してきた。

呂律は回ってないし、グニャグニャとテーブルの上で崩れている。


「Kさん!?」

「○○さぁぁぁlん、今日おうちに泊まるからよろしくなぁ(笑)」

「はぃ!!?」


嫌だった・・・が、私はKさんの自宅を知らない。

店の人も迷惑そうにしている。

今の私だったら

「先に帰りますね~♪」

ってとっとと帰っているだろう。

あの当時の私にはそれが出来なかった。

仕方なくKさんを連れて寮に帰る。

ベッドから布団を引きずりおろし、ヘベレケのKさんを床に敷いた布団に転がした。

私はベッドで眠る。


夜も3時を過ぎて。

いきなり体をまさぐられる感覚に飛び起きた。

でも起き上がれない。

Kさんが上にのしかかっていた。

襲われている・・・

そう思って一生懸命抵抗した。

しかしKさんの手は止まらない。

下まで伸びてくる手。

「生理・・・中・・・なので・・・やめ・・・・・て下・・・さい・・・」

絶体絶命のピンチにしては間抜けな言葉だ。

でも私は必死だった。

多分泣いていたと思う。

「じゃあ服の上だけ。」

そういって下着越しにずっと私を触っていた。

そして胸やら背中やらを

「こっちはいいよね。」

などと言いながら素肌にじかに撫で回す。

「肌がきれいだなぁ・・・」

とずっとささやかれ続けた。

気持ちが悪くて死にたくなった。

朝方、Kさんが再び眠りにつくまで、ずっと攻防は続いた・・・





 Blogを始めておきながら全く更新していなくてすみませんでした。

読者様が3名も申請して下さり、まさに天にも上りそうな勢いです!!

 あと3~4記事まではタイトルの8Timesは出てきません。

ここを書かないと、どうして私がヌーディストBarで働いていたのか説明できなかったので・・・

 正直、この記事は書こうかどうしようか悩みました。

私にとってトラウマになっている出来事なので。

でも、いい加減自分の中で整理をつけなければいけないなぁ、と。

でもやっぱり、凹みます・・・



総看護師長への第一声はこれだった。


『精神保険福士師になりたいんです。』



高校は衛生看護科、准看護師の資格を取って卒業。でも、決して看護資師にはなるまいとも思った。

卒業して一年、好きな事をさせてもらった。
やっぱり医療業界に居たいと思った。
学校に入り直して、きちんと勉強したいと思った。
学校には合格した、でも実家に相談すると学費が無いとはねのけられた。
学費ローンの審査も、両親はブラックリストだったので下りなかった。

絶望した。

ならば
‥‥19才になったばかりの私は学費を稼ぐべく就職を決断した。
大嫌いな看護師業。
お金の割だけはよかった。
せめて、と精神科の病院を選んだ。
雇ってくれる病院は、実家から遠く離れた場所。
顔も見たくないと思っていたから、むしろ小気味良かった。
面倒だったのでまる2年付き合った彼氏とも別れた。
過保護な親なので、これから人殺しに行くのを引き止めるような勢いで反対したが、学費をネタに交渉すると両親とも黙った。




こうして、2003年03月28日。
私はH市の外れの山の中にある病院の寮で仮染めの自由を手に入れた。


8Timesを知るまで、あとひと月の頃の事。
始めまして。
Mocoと申します。
都内某所にあったNudist Barでウエイトレスとして働いていました。



私にとって『あの店』は、白昼夢みたいな場所でした。

あの店、8Timesを軸に、19~20才までの生活があったといっても過言ではありません。


恋も、嘘も、酒も、煙草も、信頼も、裏切りも、8Timesで覚えて行きました。
今の私のベースは、あの店で出来たと言えるかもしれません。







今はもう、なくなってしまった店。
アダルトの要素が強いのに、間違いなくアダルトでは無かったあの店。
ある意味、純粋さが残っていた場所。



あの頃の私を残したくて。
もしかしたら会員だった人が見ているかもしれない、そう思って。








繋がりが途絶えてしまったからこそ、書くことが出来るものもある。