始まれば、いつか終わってしまうけど、
この恋の終わりは、
ずっと、ずっと、遠い未来でありますように。
ずっと、ずっと、彼女が笑顔でいれますように。
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あの日模試が終わり、人が減っていくエントランスに
かみゆがいた。
雨を見つめる、彼女の視線。
彼女とは休み時間に少し話をしただけ。
話しかけていいのか、どうなのか。
ただ僕がここに残っているのは、
かみゆともう一度話したいと思ったから。
その時僕は、普段体のどこかで眠っている「勇気」を、
総動員した。
かみしめるように、一歩一歩、踏み出す。
「あの・・」
微妙に上ずる声。
振り向く、彼女。
「あ、さっきの・・」
覚えててくれた。
そう思うと同時に、
頭から湯気が出そうなくらい、
次の言葉を探してる僕がいる。
「雨、すごいね。」
すこぶるつまらない一言。
そんな僕をあざ笑うかのように、
雨が強くなる。
「私、傘持ってきてないんだ。」
そういうとかみゆはちょっと苦笑して、時計をみた。
ちょっとおっとりとした、その口調。
それからお互いの名前とか二、三言、言葉を交わした。
そして、
「今度陸上大会で、かみゆさんの中学行くよ。
会場が、そこなんだ。」
すっかり忘れていた、陸上大会。
「あ、知ってるよ。学校対抗なんだよね。
じゃあ私は吉日くんの応援できないね。」
そう言うと、彼女は悪戯っ子っぽく笑った。
「残念。」
そう言って、僕も笑った。
「じゃあ、うちの中学の人と同じじゃない時は、
応援してあげる。何にでるの?」
「100メートルとリレー。
かみゆさんは出ないの?」
そこは毎年僕の席。
僕と同じ中学で僕にかなうヤツはいない。
「私、足遅いんだよね。
部活はテニスやってたけど、
高校じゃ何しようかな。」
「そうなんだ。俺は陸上かな。
あ、雨が止んでいく・・」
すごく楽しい時間だった。
だけど、楽しいときの時間は
あっという間に過ぎていく。
終了の時間を告げるかのような、夕立の終わり。
パラパラと振る夕立の残り雨。
「雨も弱くなってきたし、私帰るね。
陸上大会、頑張って。」
「うん、ありがと。あ、これ使って。」
え?っていう彼女に、僕の傘を手渡した。
どこからそんな勇気が出たのかわからない。
「いいの?吉日くんが濡れるじゃん」
「家近くだから、大丈夫。それじゃ、また!」
そういうと、僕は一目散に自転車置き場に走った。
残り雨が、冷たく頬を打つ。
いつもと同じ帰り道も、
いつもと同じファミマのポテトの匂いも、
今日だけは、いつもと違った。
始まった日。
これからどんな未来が待っているのだろう。
僕とかみゆの、始まりの、終わり。