中学生活最後の夏。
野球もやめ、走ることもやめ、
ただひたすら受験勉強に奔走していた。
国語算数理科社会英語。
秋にある学校対抗陸上競技大会の
練習にも顔を出さず、
友達の誘いも断り、
己の精神力との勝負かのごとく
勉強していた。
八月。
毎日繰り返されるセミの声と、夕立。
Family Martのポテトの匂い。
この日もそうだった。
全く同じ、変わらない一瞬。
ただ一つ違うのが、この日各塾合同の模試であること。
でも、それだけだ。
普段と変わらない、五教科の模擬試験。
ただそれだけだと思っていた・・・・。
模試会場は隣町にある商工会館。
広い会場。
商工会館の殺風景な会場に、
二人がけの長机が縦に横に連なっている。
始め。
ストップウォッチを片手に、始まりの合図を告げる
試験監督。
午前中の英語算数社会。
昼食のファミマの弁当。
同じ塾の友達との会話。
いつもと何も変わらない。
変わらないはずだった。
その子は僕の席の二列先で笑って、話をしている。
僕も笑って、友達と話をしている。
そこら中に溢れてる、会場の景色の一風景。
まだお互い名も知らない。
その時僕はまだ気づいていなかった。
静かに、この恋が始まっていたということを。