ある寒い午前のこと。
考えなしに闇雲に。
その頃、亀も道なき道を歩いている。
寒空の下で、何かを探して。
ひたすらに、ゆっくりと。
そして、探す気力もなくなり、亀はコロンと寝転んだ。
アスファルトという、黒くて固い道の真ん中で。
私はあてもなく、走っている。
山の中の景色を見たい。
喧騒ではなく、静寂を求め、騒がしい音を立てながら、私は走っている。
森の中を走る私は、道の真ん中に、何かを見た。
「あっ!」
何処の亀が道で逆さで転がっていた。
大きな車が行き交う、その道の真ん中で、亀は己の生涯を終わらせるかのごとく、道の上に身を任せていたのだ。
私は咄嗟に走るのをやめた。
逆さになった亀を救うことにした。
大きな車が何かを積んで、行き交う中で、私はビニール袋を手に持ち、亀を拾い上げて、車に乗せた。
膠着した亀と私。
彷徨い行き交う者同士が接点をもった。
ただ、亀は動かない。
あったかい車に亀を乗せて、再び走った。