戦国時代に関東で活動した武蔵吉良氏の領地だった横浜市南区蒔田(まいた)町の旅館松島で11月7日、「蒔田の吉良歴史研究会」(齋藤勁会長)の第21回講演会がありました。西尾市で2021年度にメイン事業を行う「吉良氏800年祭」実行委員の伊藤哲央さんが、「吉良氏800年祭とは」と題し、中世三河吉良氏がどのような一族だったかを振り返ったうえで、これを顕彰する吉良氏800年祭について、これまでに行われた事業と、今後計画されている事業を紹介しました。約30人が参加しました。伊藤さんが同会で講演するのは2018年9月以来2度目だそうです。

 

  

 

吉良氏については「キラめいた時代もあれば、キラわれた時代もあった」として、執権北条氏と共に栄えた鎌倉時代、将軍足利尊氏と敵対した南北朝時代、足利御三家筆頭として絶頂期を迎えた室町時代、今川義元らに敗れて没落した戦国時代について、西尾市内にある史跡を紹介しながら歴史を追いました。

 

 

吉良氏800年祭については、2021年が吉良氏による西尾統治のきっかけになった承久の乱(1221年)から800年に当たるとともに、西尾市幡豆郡3町の合併から10年の節目も重なることを指摘。「西尾城跡を軸に新たなまちづくりを手掛け、吉良氏・吉良荘を後世に伝えながら、観光誘客を目指す事業だ」という理念が紹介されました。

 

吉良氏800年祭をPRするのぼり

 

2019年2月の実行委員会設立以降、知名度アップに向けてこれまでに行った事業として、今川義元生誕500年歴史探訪ツアー、神谷傳兵衛史跡探訪ツアー、『応仁の乱』で知られる呉座勇一さんの歴史講演会、『定本徳川家康』で知られる本多隆成さんの歴史講演会、西尾市出身の漫画家すずき孔さんによる『マンガで行く 吉良氏800年の旅』発行&デジタル配信、西尾城二之丸丑寅櫓完成を記念した講演会や御城印発売、岩瀬文庫での特別展などが紹介されました。

 

吉良氏800年祭で制作された西尾城御城印

 

2021年の事業計画として、吉良氏検定、フラッグ掲出、源氏の宝刀「髭切」グッズ制作、承久の乱記念講演会、小和田哲男氏記念講演会、中世吉良氏顕彰祭などを挙げた上で、伊藤さんは「関東の吉良氏は三河の吉良氏と兄弟なので、その拠点だった横浜の蒔田、東京の世田谷と一緒に、吉良氏800年祭を盛り上げてもらえたら」と呼び掛けました。

 

 

会場では、伊藤さんが自費出版された『西尾の中世史』も紹介されました。過去に自費出版された『吉良殿列伝』(2014年)、『きららタイムズ』(15年)、『西尾戦国領主伝』(16年)の3冊を合本したもので、『吉良殿列伝』では、中世(西条)吉良氏の14代の事績を、略伝、年表、インタビュー、漫画で紹介。『きららタイムズ』では、平安時代から戦国時代まで約400年の〝吉良荘史〟を新聞記事風に紹介。『西尾戦国領主伝』では、西尾に伝わる戦国時代の領主の歴史を中学校区ごとに紹介されています。いずれも新編西尾市史で中世吉良氏を担当されている谷口雄太さんや小林輝久彦さんの研究成果に基づくそうですが、発刊から5年が経過し、新編西尾市史による研究の深化もあり、新しい発見や見解があったということで、それらを反映させる形で3部作を合本されたとのことです。