本日2019年1月6日、私がサッカー界で最も尊敬し、そして誰よりも憧れたサッカー選手・菅井直樹選手(34)が現役引退を発表しました。

今オフは入れ替わりの激しいベガルタ仙台というチームにおいて、A契約枠の問題等もあるので菅井選手の引退は薄々あるかもしれないと感じておりました。

ですが、実際に本人からの発表があると、やはり驚きとショックを隠せないというのが率直な感想です。

菅井選手は正真正銘、私にベガルタ仙台というチームを、そしてJリーグというリーグを知らせてくれた第一人者でした。

菅井選手がいなければ、間違いなく今の私はなかったです。

 

 

私が菅井選手を最初に知ったのは2011年でした。

ちょうど東日本大震災が起き、東北は非常に苦しい日々を過ごしていた時期です。

私は仙台出身ですが、その時はすでに関東の方へ移っており、いわば「被災者」ではない立場でした。

そんな中、私の中では2010年に開かれた南アフリカワールドカップのサッカーブームがまだ尾を引いていて、全国ニュースのサッカー速報なども逐一チェックしていました。

それで、春ごろだったと思います。

当時、名前だけは知っていた地元チーム・ベガルタ仙台が震災での中断明け以降快進撃を続けているというニュースをたびたび見かけます。

その時はまだ所属選手の名前はおろかJリーグが何者かすらも知らなかったのですが、「太田・赤嶺・菅井」が当時のメインスコアラーであることを数々の試合速報から頭に入れました。

また、仙台については被災地クラブという立場なだけに、「被災地に勇気を与えるサッカー」というのがキーワードとして、強く私の胸に残りました。

当時は名前も知らなかったメガネの監督が、試合後のインタビューを号泣して切り上げる姿はとても印象的でした。

私は先述の通り勇気をもらう立場ではなかったのですが、チームが被災地に勇気を「与える」姿を見て、本当にカッコイイと感じていました。

 

そうして私はベガルタ仙台というチームに少し興味を抱き始めます。

幸いにもワールドカップのおかげでサッカーの知識はある程度あったので、チームやリーグの「勝手」を知るのに時間はかかりませんでしたが、ベガルタ仙台を知れば知るほど私は衝撃を受けます。

・前シーズンは降格の危機にあったこと、・メインスコアラーの1人の菅井はDFであること、・震災が起こる前から、他のどのクラブよりもお金がないこと、・選手はほとんどが他クラブで出番に恵まれなかったクラスの選手であること、・それでも一致団結して「被災地に勇気を」を鍵に粘り強く上位戦線に居続けていたこと、などです。

ピッチ上の文脈では語り切れない部分にも大いに魅力と衝撃を感じ、ますますこのチームに惹かれました。

そして菅井選手についても、DFながらFWさながらの動きを見せてゴールを量産するその意外さ、しかし守備にもしっかり顔を出す不思議さ、驚異的なジャンプ力、関口さんや角田さんと真逆に静かに背中で語る独特なオーラから、一種の「憧れ」が私の中で芽生えました。

そして、今まで自分が見てきた数多のサッカー選手の中でダントツで「異彩」を放つこの菅井選手をもっと知りたいと思い、そこからベガルタ仙台の試合、さらにはJリーグの試合を追っていくようになりました。

すなわち、今の私のJリーグ観戦癖は、菅井選手がいたからこそ生まれたものです。

 

 

そして2011年の8月、大宮のNACK5スタジアムにて仙台のアウェイゲームが行われるということだったので、生まれて初めて現地観戦に赴きました。

私の注目していた菅井選手はいつも通りスタメンに名を連ねていました。

試合は前半にミスなどから大宮に2点を先行され、0-2で折り返します。

ゴール裏からはブーイングが飛びました。

後半に赤嶺のゴールで1点を返しますが、その後なかなか追い付けず、中島や中原などのFWを立て続けに投入しても追い付けずに終盤を迎えます。

しかし、そこで迎えたCKのチャンス。MF松下のクロスに高さのあるCB・チョビョングクが頭で合わせます。

これはポストを直撃し、このチャンスもダメかと私も周囲のサポーターも確信しました。

しかし、競り合いの中でピッチに倒れた選手が精一杯足を伸ばし、つま先で押し込んでついに同点弾を奪います。

あまりにも一瞬の出来事で最初は本当に誰かわからなかったのですが、場内のアナウンスで菅井選手のゴールだと知ります。

現地で観ていても目が追い付かないプレー、これが菅井直樹だということを知らしめられた、一生忘れられない試合でした。

 

 

それからも引き続き試合を見続け、時には現地でも観戦しましたが、やはり菅井選手のプレーはボールに触れるまで全くもって予測不能でした。

そしてそのたびに、面白くて、なおかつ憧れて思わずニヤついてしましました。

2013年には25番の入ったレプリカユニフォームを買いました。

今私が持っている唯一の番号付きレプリカユニフォームです。

試合では年を経るにつれて出番もどんどん減少しますが、少ない出場時間の中でもその動きの神出鬼没さや日本人離れした身体能力の高さは健在でした。

「何でそこにいるんだよ!」とは何度言ったかわかりません。

1秒間で2本シュートを打って2本目を沈めた11年のホームC大阪戦、右SBなのに右サイドからのクロスにFWの立ち位置で合わせた12年のアウェイ清水戦、相手DFのバックパスミスをなぜか一番に掻っ攫ってゴールに流し込んだ13年のアウェイ磐田戦、5秒でハーフラインからゴール前まで瞬間移動して1対1を決めた14年のホーム徳島戦、下がりながらの体勢ながらかなりのハイジャンプで金園のボレーをアシストした15年のホーム鳥栖戦、そして石原のシュートミスに体ごと突っ込んでねじ込んだ17年のアウェイ清水戦は非常にスペクタクルなシーンでした。

現役最後の試合となった2018年最終節アウェイ神戸戦でも、試合終盤に見せたプレーには驚きました。

ビハインドの状態での平岡との交代で3バックの右に入りながら、左サイドからペナルティエリア右のスペースへのスルーパスに誰よりも早く反応して完璧な位置に走っていました。

軌道上にいたジャメがもしスルーしていれば、菅井選手はフリーでGKと1対1になっていました。

結果的にはピッチで見られる最後の瞬間となったその試合でも「らしすぎる」動きを見せていた分、まだまだやれるとは私自身勝手ながら思っていました。

ベガルタ仙台はA契約枠などの問題があるとはいえ、J2やJ3の他クラブへ移籍したならばスタメンも張れると感じていました。

 

 

ただ、それでも今まで菅井選手がたびたび口にした「ベガルタで引退する」という約束を守ることを選択したご本人の意思を、私は精一杯尊重したいと思います。

プレーのみならず、ゴールに喜び過ぎて札幌ドームの溝に落下する姿、デジっちで「無音」の時間を全国に届けた姿、サプライズの誕生日パーティーに仕掛け人よりも早く現地入りしてしまう姿、しかし後輩の面倒をしっかりと見て向き合ってくれる姿、苦しい時も表情ひとつ変えずチームメイトを励ます姿など、その仕草ひとつひとつが一生忘れられない選手でした。

 

 

最後に、16年間の現役生活本当にお疲れ様でした。夢を与え続けてくれて本当にありがとうございました。

一緒にベガルタを愛してくれてありがとうございました。引退しても、私の中では一生憧れの選手です。

そして、これからはスタッフとして引き続きベガルタをよろしくお願いします。

 シーズン終了からだいぶ経ってしまいましたが、ようやくひと息つける時間ができたようなので久々に更新します。ただ、私はプレイヤーでもなければ関係者でもないので、このタイトルが正しいかというのはやや怪しいです。ですが、これに代わる良い表現がなかなか思いつかないので便宜上これで進めたいと思います。

 

 

 まずはJ3。最優秀選手のみ選出させていただきたいと思います。MVPは、FC琉球の富樫佑太選手です。23歳の富樫は今季大きく花開き、16得点を挙げて琉球の「超攻撃サッカー」の中心として輝きを放ちました。J3鹿児島から個人昇格後、すぐに大分で活躍した藤本憲明のようにJ2での活躍にも期待です。

 

 

 

 続いてJ2。こちらはベストイレブンも加筆します。ベストイレブンは、GK上福元直人 DF橋内優也、カルフィンヨンアピン、井林章 MF田中達也(熊本)、藤田息吹、丸谷拓也、平戸太貴 FW佐藤優平、藤本憲明、大前元紀。悩みに悩み抜いた末、結局順位よりけりなメンバー構成となりましたが、どの選手も非常に高いパフォーマンスを披露していたのでこのような選出とさせていただきました。

 

 そして、MVPは松本山雅の藤田息吹選手です。ここは迷いなく、即答で選出しました。「ソリッド」をモットーとする山雅にとって、「発電機」となる選手は多くいても「総司令官」となる選手がいなくて時に落ち着きを失ってしまう、というのがここ数年の問題でした。しかし、藤田息吹が加入した今季は、彼が組み立ての中心となって中盤の底から着実に攻撃を作り上げ、奪われた際は彼が素早くスペースをカバーすることでピンチを未然に防ぐという場面が何度も見られました。ボールのないところでもチームの勝ち点に着実に貢献するその「地味さ」(もちろん褒め言葉です)はまるでフランス代表のカンテのようです。

 山雅のパワフルなサッカーがJ2初タイトル&昇格までたどり着いたのは、それを陰から支える彼の存在があってこそだったと言えるでしょう。もちろん、「いぶし銀」の岩間雄大や「精神的支柱」の田中隼磨の貢献も欠かせませんが、”落ち着かせる”、”まとめる”に加えて”ゲームを作り上げる”の働きもこなした藤田は別格でした。

 

 

 

 最後はJ1。まずはチーム別の最優秀選手の選出です。:チャナティップ、仙台:蜂須賀考治、鹿島:鈴木優磨、:伊東純也、浦和:興梠慎三、:ディエゴオリベイラ、川崎:家長昭博、:山中亮輔、湘南:岡本拓也、清水:北川航也、磐田:田口泰士、名古屋:ジョー、:ファンウィジョ、C大:丸橋祐介、神戸:三田啓貴、広島:パトリック、鳥栖:権田修一、:澤田崇

 

 そしてリーグ全体のベストイレブンは、GK権田修一 DF佐々木翔、チャンヒョンス、谷口彰悟、山中亮輔 MF中村憲剛、今野泰幸、家長昭博、チャナティップ FWジョー、ファンウィジョ とさせていただきました。こちらもかなり悩みましたが、”勝負どころで勝ち点に直結する働き”を見せた選手を最優先に選出した結果こうなりました。そのため、公式のベストイレブンでは7人もリスト入りした川崎からの選出は3人となりました。また、主観マシマシの選出になってもよくないので、FootballLab(http://www.football-lab.jp/)にて算出された各ポイントも参考にしました。

 まず、残留争いに巻き込まれながらリーグで2番目に失点の少なかった鳥栖の権田を守護神として選出しました。中断明け後の19試合で複数失点を喫したのはわずか3試合という記録は驚異的です。

 DFもチームの被失点数を一番に考慮しましたが、山中は左SBながら「偽SB」として4得点・8アシストと大車輪の個人成績を残したため、どうしてもそこは見逃せませんでした。裏のスペースのカバーという課題を大きく残しつつも、マリノスの攻撃的なサッカーの「象徴」となっていました。

 中盤は、基本的に私は「パスで攻撃を構築できる選手」「個で局面を打開できる選手」「スペースの認知能力に長けた攻撃的な選手」「スペースの認知能力に長けた守備的な選手」という構成で組むので、その特徴のある中でより良いパフォーマンスを見せた4選手を選びました。FootballLabの「パスポイント」でリーグ1位に輝いた憲剛、札幌の4位フィニッシュの立役者となったチャナ、公式MVPの家長、そして降格危機にあったガンバを夏の先発復帰後に9連勝までに導いた今野です。

 FWはもちろん得点数を一番の基準としましたが、その中でも特に「苦しい時にゴールを奪い続けた」ストライカー2人を選びました。ファンウィジョとジョー、この2人の覚醒があったからこそガンバと名古屋は復活のキッカケをつかみ、破竹の勢いで連勝を重ねて行きました。

 

 そして、総合的なMVPはもちろん家長昭博選手です。ただ”エロい”だけではない。チームのためのハードワークを惜しまないファンタジスタがどれほど理想的かは、想像に難くないでしょう。彼のパフォーマンスの素晴らしさは、もはやここで改めて述べなくとも十分だろうと思います。

 

 

 今はオフシーズンでなかなか胃が痛む時期ではありますが、各クラブが新しい編成で挑む来季も楽しみですね。個人的には、しばらく追っていた山形の汰木が浦和へ移籍してJ1で見られるというところが非常に興味深いです。

 お久しぶりです。ネタとしては前々から書きたいと思っていたのですが、何だかんだ伸びてこの時期まで来てしまいました。昨日はまさにJ2の2018シーズンが終了しました。大分のJ1でのプレーが楽しみです。それはそうと、今回は注目選手のうち、長い目で見てこれから代表の中軸を担ってくれると期待する選手をリストアップしたいと思います。ちょうど今は代表ウィークですしね。ちなみに中島・南野・堂安トリオはもはやサッカーファンなら誰もがスーパーだと認める活躍を披露しているので、ここでは割愛させていただきます。

 

北川航也(清水エスパルス・22歳)

 私は大迫の後を継ぐ選手になってほしいと大きな期待を寄せています。今季はJ1で大ブレイクし、現時点で13ゴールを挙げています。特別足が速かったり体が強いワケでもないのですが、体の「使い方」が抜群に上手いです。特にDFを食いつかせると反転して一気に前を向いてカウンターチャンスを生む、というシーンがよく見られますね。また、それゆえにゴール前ではシュートを打ちやすくする「間合い」を作ることにも長けています。

 ただ、彼は個人としての能力に加え(もしかするとそれ以上に)、周りを「生かす」能力にも非常に輝かしいものを持っています。クラブでは主に2トップを一角を組んでおり、これまで大前元紀(現大宮)、チョンテセ、クリスラン、ドウグラスなどいわば「クセ強め」の選手とセットでやってきました。ただ、そのいずれと組んでも素晴らしいコンビネーションを見せてきました。先述の通りDFをいなすことを得意としているので、たとえば自分にDFを引き付けて相方のスペースを開けたり、あるいはサイドに開くことで相手SBの関心を寄せ、その間にサイドハーフにインナーラップさせる、というプレーはよく見られます。ボールのないところでもチームのチャンスを創出できる選手は私自身非常に好きですね。

 で、上記の特徴からするとやはりタイプ的には大迫勇也の系譜を継いでいるような気がします。もちろん現状ではその大迫と比べて大きく実力差が開いていますが、大迫もデビューしたての頃はさほど評価は高くなかったと記憶しています。今でこそ下記のことはむしろ彼の良さとなっていますが、当時は「サイドに流れすぎ」「自分でシュートまで行かない」「下りて来すぎ」と批判されていました。まあ前任のワントップが典型的なボックス型ストライカーの前田遼一だったので仕方ないとも思えますが。ただ、その大迫も今や誰もが認めるスーパープレイヤーへと進化しました。だからこそ、22歳の北川にも長い目で見て今後日本の攻撃の中核になってほしいと期待しています。現時点の課題としては、相手にガッツリと当たられても倒れないこと、またサイドのスペースへの散らしの精度を上げること等ですかね。

 

 

守田英正(川崎フロンターレ・23歳)

 正直、開幕前の「スーパールーキー」評はよくある誇大表現だとばかり思っていました。ただ、夏場以降の彼のパフォーマンスを見て、なるほどその表現はぴったりだと確信しました。さも当たり前のように王者の中盤でプレーしていますが、まずこれがとてつもないことです。川崎のような成熟度が極めて高いチームは、何年も第一線で輝いてきた選手ですらすっとフィットするのは非常に難しいです。今季のJ1MVPと目される家長でさえ、その実力と実績はかなりハイレベルながらも、昨季は加入してからフィットするまで結構な時間を要しました。今で言えば齋藤学がその壁にぶち当たっているように感じられます。しかし、守田はあろうことかプロ1年目ながら、しかもシーズン途中に名古屋へ移籍したエドゥアルドネット(川崎のビルドアップの”全権”を担っていると言っても過言ではなかった選手です)の「後釜」という難しい役回りを何の違和感もなくこなして見せました。彼自身、言ってしまえば地味な選手なのであまりこのことは注目されませんが、本当にこれは凄いことです。まさに規格外のスーパールーキーです。

 具体的な特徴を紹介すると、まずボランチとサイドバックの両方を高いレベルでこなせる「マルチ」型です。憶測ですが、おそらくサイドハーフでも高いパフォーマンスを見せるのではないでしょうか。そして、それを裏付けるのは高い「空間把握能力」と「危機察知能力」です。90分間終始首を振り、どこのスペースを使えば最も効率よくゴールに迫れるかを探します。これはボールを持ってる時も持ってない時も同じです。持っている時はそこへ正確なパスを送り、持っていない時は自らそのスペースに走り込んだり味方に指示して走らせてチャンスへつなげます。要するに「先を計算するスキル」に長けているということですね。そしてこのことは守備にも生かされます。被カウンターの際にはまずボールホルダーに体を当てて攻撃を遅らせたり、危険なスペースへフリーランしてパスを呼び込む相手をいち早く追ってパスを出させない、などのシーンは度々見られます。球際での「猟犬」的なボール奪取もなかなかに上手いので攻守両面において”裏で”チームを支える便利屋です。本当に23歳でしょうか・・・

 課題としては、シュートに「直結する」ようなパスのクオリティーでしょうか。FWにズバっと入れるような縦パスを身に付ければ遠藤航や柴﨑岳よりも上の序列に来る日も訪れるかもしれません。あとはミドルシュートの意識とかですかね。

 

 以上の2人が今季のJを見ていてとりわけ輝いて見えた若手選手です。長い目で期待したいと思います。ちなみに、ポスト長友が唱えられる左サイドバックは正直まだいまいち、という感じがします。山中や車屋、松原らといった有望株が躍動していますが、3人とも3人なりにまだ大きな課題を抱えているように思えます。例えば山中は、自分の「前の」視点を使うプレーには滅法強いのですが、「後ろ」を突かれると途端に厳しくなるという大きな課題があります。なお、長友の後継者という意味で私が一番期待するのは、まだかなり粗いですが鹿島アントラーズの安西幸輝です。プレーにバリエーションが豊富なところと攻守の切り替えが非常に早いところが魅力的ですね。

 

以上となります。久々の更新でしたが、お読みいただきありがとうございました。

 今週も、イニエスタが反則級のゴールを決めたり久保くんさんが突然マリノスに移籍したりと話題の尽きないJリーグ。そんな中、私の応援するベガルタ仙台はホームで湘南ベルマーレに4-1の大勝を収めました。ユアスタでは3月31日の長崎戦以来での勝利です。キーポイントは、「ピッチ上での修正力」でした。

 

 まず、この試合では両者ともに3-4-2-1の布陣を敷いたため、必然的に「ミラーゲーム」となります。これを打開する狙いか、仙台は長身のハーフナーマイクを最前線に据えます。このハーフナーにロングボールを放り込み、「人に食いつく」傾向のある湘南の守備の関心を引き付け、その”ウラ”の隙をシャドーの西村と石原が突いてハーフナーがそこへ落とすことで好機を演出したい、という狙いがうかがえます。しかし、いざ試合が始まってみると、流れは完全に湘南が掌握します。湘南の最前線はこちらも長身の山崎リョーゴ。ハーフナーとの決定的な違いは、「前からのプレスの意識」の差です。ハーフナーはどちらかといえば「待って受ける」タイプですが、山崎は「動いて引き出す」動きも積極的に行います。そのため、序盤の湘南は山崎が最前線からのプレッシングを行うことでイレブンを”前寄りに”牽引し、このせいで仙台のバックラインの選手はそもそもハーフナーへロングボールを蹴り込む余裕すら与えてもらえませんでした。以前の投稿でも書いた通り「危ない位置での煮え切らない対応」が散見されたこともあって仙台はこのままグイグイと自陣ゴール前に押し込まれ続け、前半12分には流れの中からはね返し切れず、先制点を献上します。

 「また同じ形で首を絞めるのか・・・」とがっくりしてしまいそうなところでしたが、この日の仙台は違いました。キーマンは関口でしょう。多くの仙台サポが知るところでしょうが、この選手は仙台の「黄金期」を実際に経験している選手です。つまり苦しい時にもこのチームはどうすれば盛り返せるかを熟知しています。富田やリャンのような「静かに奮い立たせる」タイプとは違い、彼は人柄的にも「真っ正面から盛り立てる」タイプです。悪い意味でも「真面目な」選手が多かった仙台にとって、彼の帰還はここ数年でも一番の実質的な意味での補強だったのではないかと私は感じています。彼が今季に先発したリーグ戦の勝率が80%なのは決して偶然ではないと思います。

 

 そして、その関口はこの試合ではプレーでも魅せてくれます。自らのオウンゴールで先制を許したわずか3分後、前線へ走り込んでいるところにたまたま相手のミスパスが転がり込みます。一気にスピードアップして拾いますが、すぐさま1人のDFに進路を塞がれます。横には複数の味方が追い付き、パスの選択肢は多くありました。しかし、その状況であえて自らでの仕掛けを選び、きわめてシンプルにDFを横に揺すってすぐ右足を振り抜きます。これが決まって同点に追い付きますが、もしこれが外れていたとしても「まずは積極的かつシンプルに攻め切って振り出しに戻そう」の姿勢をイレブンに伝えていただろうと思います。失点すると途端に足が止まる悪癖、ゴール前で急にトーンダウンして両ワイドに任せる以外の選択肢を潰してしまう悪癖があったこのチームにとって、関口は最高の「起爆剤」だと確信しました。

 こうしてスコアと1-1としたことでようやく落ち着いた仙台。バックラインにもゆとりが生まれ、ハーフナーへロングボールを当てられるようになります。だが、想定外だったのはロングボールの質、そしてハーフナーの落としの質があまりよくなかったことです。事前に用意していた「有効な形」とはいえ、このままボールを捨て続けるのも勿体ない状況。こうした中、仙台は主導権を保ちながら攻めるべく、素晴らしい「修正」をします。前線での預け先に、ハーフナーのみならず石原も加えます。多くの方が知るとおり、石原は地上戦には滅法強い選手です。日本代表で言えば大迫と岡崎の働きを1人でするような選手です。その石原へゴロを預けて時間を作ってもらうことで、その脇のスペースを他の味方が突いていく、という攻撃を展開し始めます。なので、”実質的に”石原とハーフナーが2トップになり、西村と奧埜がインサイドハーフ、アンカーに富田といったような配置になります。こうしてゲーム展開が序盤から少し変化した前半32分、西村が「それ打つの?!」と誰もが意表を突かれたシュートを決めて仙台が逆転します。このシーンも、単体で観れば関口の同点弾が布石になっていたように私には感じられます。

 

 2-1でリードして折り返しますが、守備時の対応ははっきり言って「納涼モノ」でした。「なんでクリアしないのそれ」と言いたくなるようなシーンはこの試合も前半ではかなり多く、相手の精度に救われた感は否めません、しかし、ここでも仙台は「修正」を見せます。ハーフタイムに監督からの指示があったのだと思われますが、後半は開始直後に秋野のシュートで肝を冷やされた以外には寿命が縮まるようなシーンはほぼなく、際どい位置に流れた・流れそうなボールはまずそこから大きく追い出して相手の攻撃を「切る」を徹底していました。布陣を4バックに変更した湘南が同点に追い付くべくかなり立て込んできましたが、とにかくそれを切って無力化することで相手から大胆さを削いだのはかなり評価できる点だと思います。仙台の苦手とする「トランジション」をむしろ大得意とする湘南の攻撃を止めるには、とにかく”イケイケ状態”で自陣ゴール前まで攻め込まれる前にシンプルにプレーを切るのが一番有効だ、と改めて実感しました。しかしまあ平岡は素晴らしい選手ですね。ボールの「捨てどき」を誰よりも心得ている、リスク管理にきわめて長けた選手です。

 こうして一進一退の攻防が続く中、仙台の攻撃は前半の中盤以降と同様にハーフナーと石原が「駅」となり、その脇や後ろに味方のサポートが来るという形を取ります。攻撃が停滞していた時期に続いていた、「とりあえずサイドに投げとけ」ではなく、近い味方、遠い味方をうまく使い分けながら落ち着いて攻めます。試合の決め手は後半10分のハーフナーのゴールだったのではないでしょうか。「アイソレーション」の状態でボールを受けた蜂須賀が、相手の寄せが速いと見るや右サイドのゴールライン際で時間を使って相手の関心を引き付け、その間に後ろから上がってくる平岡やゴール前で待つハーフナーへの注意が甘くなる。そして蜂須賀がフリーの平岡へ落とすと、平岡はワンタッチでフリー”気味”のハーフナーへ放り込む。ハーフナーは楽々と頭でねじ込みゴール。こんなに息の合ったプレーはなかなか見られません。もし平岡がクロスの前にワントラップでもしていたら、ハーフナーはあんなに楽な体勢でヘッドできなかったでしょう。ワンシーンだけ切り取って語りましたが、これもなかなか趣深いゴールでした。ちなみに、ハーフナーが中野と交代して布陣が石原ワントップ、西村&中野シャドーとなった後は、当然ですが石原1人がボールの「預け先」となりました。

 

 これで完全に「勝ちの流れ」をつかんだ仙台は危なげなく、何ならばさらにもう1点を追加して4-1で完勝しました。関口の「役者ぶり」と、チーム全体としての攻守の「ピッチ上での修正力」が光り、手堅く勝ち点3を手にしました。終盤に見られた、奧埜の「ゼロトップ」起用というオプションもかなり面白いな、と。伝統的に試合の「締め方」に問題があった仙台にとって、前プレスで相手のパスコースを狭める技術はチームでもピカイチの奧埜を頂点に他の味方がどっしりと構える形はかなり効きそうです。次のガンバ戦はどういった対応が見られるでしょうか。いずれにせよ、この湘南戦で的確な「修正」を見せて勝ち星を手繰り寄せたことは、チームにとって今後への自信となったのではないかと思います。

 先日のJ1ではイニエスタがJリーグ史に残るに違いない素晴らしい一撃を決めました。バルサの「黄金期」の1011シーズンからサッカーを本格的に見始めた身としてはなかなか心に沁みるゴールでしたが、この試合ではもう1つ素晴らしいゴールが生まれました。今夏にJ2の岐阜からJ1の神戸へ電撃加入した23歳の古橋がいきなり結果を出し、タレント軍団の中で確かな爪痕を残しました。彼は直近のJ2では一番の成長株として、多くのJリーグファンから高い評価を得ていました。この古橋に続くように、今後さらに株を上げて行くであろうと私が見込む若手選手を今回は3人紹介したいと思います。ただ、注目選手は3人どころではないので今回だけで終わることはなさそうな感じがする、というのが正直なところです。

 

①汰木康也(23歳・モンテディオ山形・左ウイングやシャドー)

私が現在J2で最も注目している選手です。軽くプレースタイルを述べると、「変態技巧派チャンスメイカー」ですね。タイプ的には鹿島や仙台に在籍した野沢拓也を彷彿とさせます。試合実況ではよく「スピードが持ち味」などと評されていますが、正直スピードはさほどセールスポイントではありません。とにかく柔らかい足腰で散歩のように相手をかわすドリブル、何ともない姿勢から突然繰り出されるキラーパス、そして困窮した局面を一発で打開するサイドチェンジにこそ一見の価値があります。ただ、彼の最大の課題は「足腰の弱さ」です。踏ん張るべきところで踏ん張れず、あと1つでゴールに迫れるという場面で簡単に奪われるシーンが多いので、せっかくのテクニックがいつも中途半端になってしまっています。ただ、それでも攻撃センスの高さはJ2でも別格のモノを持っているので、この課題さえ克服できれば一気に上がってきそうな予感はかなり高く感じます。

 

②翁長聖(23歳・Vファーレン長崎・左ウイング)

何を言っているんだ、J1でスタメンを張っているじゃないか、との意見も出てきそうですが、私が思うにこの選手はJ1のレベルをゆうに超える器の選手になるのではないか、と見ています。持ち味を挙げますと、豊富な運動量・加速力の高さ・サイドのスペースを突くタイミングの良さ・鋭いクロス・カットインのセンス等があります。これだけを見れば、どれほど彼が「理想的なウインガー」かをお分かりいただけるかと思います。ではそれ以上に何を期待しているかと言いますと、これは単純に「精度の問題」です。彼の魅力は上に挙げた通りですが、トラップやボールタッチ、パスやシュートの精度が現状ではその「潜在能力」の高さに追い付いていない感がどうしても否めません。せっかくいい動きをしているのに、ボールが来ると簡単なミスでチャンスをフイにしてしまっている場面は何度か見られます。ただ、この選手も課題が明確に見えているので、ここを詰めれば一気に、それも爆発的に開花する可能性を大きく感じます。ところで同じウインガーの伊東純也はとっくにJ1レベルを超えていると思うのですが、いかがでしょうか。

 

③渡辺皓太(19歳・東京ヴェルディ・インサイドハーフ)

一言で言えば、とんでもなくスケールの大きな選手です。東京五輪の中心どころか、次世代のA代表の「心臓」となる可能性を持ったスーパーMFです。コマネズミのように動き回って「つなぐ・崩す」が信条のヴェルディの攻撃を操り、守備にも素早い寄せで相手アタッカーの選択肢を一気に削ります。「そこにいてくれ!」というシーンにはいつもこの小さな33番が映っているのは偶然ではありません。不用意なボールロストなどもほとんど見られず、常にチームにとっての「最適解」を見つけ、それを正しく実行できる姿は例えるならイニエスタでしょうか。そして、一番恐ろしいのは彼がまだ19歳という年齢であることです。J2とはいえ、19歳にしてここまでサッカーの「やり方」を会得している”デキる”選手を決してナメてかかってはいけません。余裕があればこのゴール(https://www.youtube.com/watch?v=zNityaV1RZU)も見てください。変な茶々が入らない限り、本当にとんでもない選手になる予感がプンプンします。

 

 

以上、今回はこの3人の紹介にて閉じさせていただきます。いかがでしょうか。まだまだ注目すべき選手は多くいるので、読者の皆さんもJリーグ、興味があればJ2やJ3も見てみるととても面白いと思います。