カラオケの個室の中は
テーブルを真ん中に、左右に
長いソファが置かれていたけど
私たちは隣に座っていた。

「手、見せて」。

Sくんがふいに手に触れてきた。

「爪、長いね。切らないの?」

爪を伸ばしている私とは対照に、
Sくんは爪が短い。

バレーボールをやってた時の
癖で少しでも伸びると
切らずにいられないらしい。

Sくんから手を握ってきたから
今度は私から恋人つなぎをしてみた。

「うわ、俺こんなつなぎ方したの
何年ぶりかな」

ほんとに彼女いなかったのか…
どんどんSくんに対して好感があがる。

手をつないで見つめ合う。

切れ長の一重の目がきれいで
恥ずかしくてずっと見ていられない。

Sくんが壁に手をつき、
いわゆる壁ドン状態になった。

「俺、いまかなり頑張ってる」。

Sくんて、女の子に迫る時
こういう風になるのか。

今日会ったばかりなのに、
もうかなり深いところまで知った。

顔が近い。

「どうしたい?」

Sくんが聞いてきた。

自称Sっていってたけど
こんなに年下なら、かわいいだけだよ?

でも、のってみる私。

酔いがまだ残っているのと
眠気と深夜のテンションと
この空気感でもうよくわからなくなってた。

「Sくんとキスしたい。」

どちらからともなく、
唇をあわせる。

Sくんとのキスはすごく気持ちよかった。

絶対エッチしたら
気持ちいいだろうなって思った。

時計を見ると朝4時を回っていた。

眠い。化粧落としたい。帰りたい。

Sくんとはもっと一緒にいたかったけど
それ以上に家に帰って寝たかった。

Sくんの始発の電車は
6時台だったから少し早いけど
私が帰りたいと言って、
カラオケを出ることにした。

帰りの支度をしているSくんの
後ろ姿にぎゅっと抱きついてみる。

目線の先にはうなじ。

若い男の人は首からうなじにかけて
すごくセクシーだ。

首元の凛々しさにくらっとする。

いま、この空間で、
この子は私だけのもの。

抱きしめながら、
独占感と優越感に浸った。

私の車に乗り込んで、
Sくんを駅まで送ってあげた。

「帰り眠くない?大丈夫??」

「うん。眠くなったら休憩する」

「俺、時間あるし付き合うよ全然」

休憩ということばに反応したのか?
それとも彼の純粋な優しさ?

でも一刻も早く帰りたかったから
電車はまだ始発待ちだったけど
Sくんを駅で降ろした。

「あ、LINE、いい??」

そうだ。
はぐらかしたままだった。

車内でLINEを交換して
Sくんは車を降りる。

「ありがとう。気をつけてね!」

Sくんがにこっと笑って手をあげる。

オールしたのにその
犯罪級にかわいい笑顔はなんだ。

こっちはげっそりなのに…。

家に帰って、私は爆睡。

オールなんて数年ぶりだ。

でもすごく幸せな気分だった。

Sくんとまだもっとたくさん
遊びたくて、これからの展開が
どうなっていくのかわくわくした。

寝て起きると、Sくんから
電車で寝過ごして初めて駅員に
起こされたと可愛いLINEが入っていた。