そう、あれは2月の終わりのことでした。
私は酸素吸入をして生活するために器具の説明やら
効率の良い呼吸の仕方やらなにやらかんやら
教えてもらっていました。
病室は6人部屋でしたが入院者は3人でした。
始めは気にも留めなかったのですが、
ある時期から不定期にあまり感じの良くない臭いがすることに気が付きました。
私の向かいの患者は一日早く退院して行ってしまったので、
斜め向かいのご老人が自分で用足しにいけないことに気が付きました。
看護師さんが来て出るとか出そうとか聞いているものだから、
それである時間の不快な臭いは排泄の臭いだと判ったのです。
自分の鈍さにも驚きました、が、
実に勝ってながら、そうとわかると御飯も不味く感じるようになりました。
私も大動脈乖離を起こした時はベッドの上で用を足していたのです。
そのおおじいさんの気持ちは身に染みてわかるつもりですが、
なにぶん臭いが私の鼻を直撃するものですから、
入院は1週間といわれましたが、先生の許可も出たことなので
五日で逃げ出したのです。
人間という奴は何か食べないと生きていけない、
食べればいらないモノは捨てなければならない。
齢を取って自分では動けなくなっても、
この循環から逃れることは出来ない、
たとえ大金持ちであろうと素晴らしい体を持っていようと
まさに人を選ばず必ずやってくる定めから
逃れることは出来ないのである。

