8回目受験生の再現答案です。
諸賢にお見せするレベルではないかもしれませんが、せっかくなので公開することにしました。
経済法第1問
本件計画は、10条1項に違反しないか。
1(1) 「一定の取引分野」とは、市場をいう。その画定は、商品及び地理的範囲について、主として需要者からの代替性、必要に応じて供給者からの代替性を考慮して行う。
(2)ア 甲部品の需要代替性につき特段の事情はない。よって、商品市場は甲部品に画定される。
甲部品は、輸送費が取引上の障壁とならない。また、甲部品の世界における販売価格は実質的に同一である。そうすると、甲部品の需要者たる乙機器のメーカーは、甲部品を世界中から同様の価格で仕入れることができる。よって、地理的市場は世界市場に画定される。
したがって、市場は世界における甲部品の販売市場に画定される。
イ 乙機器の需要代替性につき特段の事情はない。よって、商品市場は乙機器に画定される。
乙機器の需要者たる丙装置のメーカーは、乙機器を世界中から同様の価格で仕入れることができる。よって、地理的市場は世界市場に画定される。
したがって、市場は世界における乙機器の販売市場に画定される。
2(1) 「競争を実質的に制限することとなる」とは、市場支配力を形成維持強化する蓋然性があることをいう。
(2)ア 世界における甲部品の販売市場について
本件計画が実施されると、X社の業績がY社の業績に影響する。そうすると、Y社は、X社の業績を上げるため、今後も従来どおり甲部品の多くをX社から購入し、B社及びC社からの購入量を増やさないと予想される。また、D社は甲部品のほとんどをA社から購入しており、E社及びF社も甲部品のほとんどをX社から購入している。そうすると、本件計画の実施により、B社及びC社は、製造設備の稼働率を高く維持できず、経営が困難になるおそれがある。
B社及びC社が上記市場から排除されると、上記市場は、50%のシェアを有するX社及び45%のシェアを有するA社の2社のみの寡占市場となる。そうすると、X社及びA社は、互いに他社の行動を高い確度で予測できるようになり、協調的行動を採ることが利益となる。よって、X社及びA社は、協調的行動により甲部品の販売価格を左右する力を形成する蓋然性がある。したがって、市場支配力を形成する蓋然性がある。
イ 世界における乙機器の販売市場について
本件計画が実施されると、Y社は、自社の競争者たるE社及びF社に甲部品を販売しないよう、X社に働きかける動機を持つ。そうすると、E社及びF社は、甲部品を購入できず、事業活動が困難になるおそれがある。
E社及びF社が上記市場から排除されると、上記市場は、40%のシェアを有するD社及び30%のシェアを有するY社の2社のみの寡占市場となる。しかし、丙装置のメーカーは、乙機器メーカーに対して取引上の立場が強い。よって、需要者からの競争圧力が強く、D社及びY社が協調的行動により市場支配力を形成する蓋然性は認められない。
ウ したがって、世界における甲部品の販売市場について、「競争を実質的に制限することとなる」に当たる。
3 以上より、本件計画は、10条1項に違反する。
(1251字)
経済法第2問
協会の保守点検部会がBらの入会申込みを否決した行為は、8条3号に違反しないか。
1 協会は、浄化槽の普及を図るという共通の利益を増進することを目的とする法人であり、「事業者団体」(2条2項)に当たる。
2(1) 上記否決が、協会の正規の意思決定機関の決定に基づくといえれば、協会の行為といえる。
(2) 協会は、社員総会を置く。社員総会は、協会の正規の意思決定機関といえる。そして、社員総会で各部会の入会基準を決定し、各部会において、同基準に基づき、入会申請者の入会の可否を決定している。そうすると、上記否決は、社員総会の決定に基づくものといえ、協会の行為といえる。
3(1) 「一定の事業分野」とは、市場をいう。
(2) A県における浄化槽の保守点検市場が「一定の事業分野」に当たる。
4 「現在又は将来の事業者の数を制限すること」について
(1)ア 上記否決は、Bらが非会員として上記市場で事業を行うことを禁止するものではない。しかし、8条3号の趣旨は、市場における競争を維持する点にある。そこで、事実上、市場での事業活動を困難にすれば、「現在又は将来の事業者の数を制限すること」に当たる。
イ 協会は、水質検査薬や消毒剤のほとんど全てを供給するメーカーに対して、非会員に供給しないよう働き掛け、これに同意することを余儀なくさせている。上記否決によって、Bらは非会員の地位にとどまることとなり、保守点検に使用する水質検査薬や消毒剤の入手が困難となる。
協会は、清掃業の許可を受けていない非会員が保守点検業を行うため登録を申請する際、清掃業者である会員が、当該登録申請者と提携してはならないことを決定した。上記否決により、Bらは、清掃業の許可を受けていない非会員の地位にとどまることとなる。そうすると、Bらは、登録期間の満了後には、登録申請に必要な浄化槽清掃業者との提携を受けられなくなるため、保守点検業を継続して営むことができなくなると見込まれる。
よって、上記否決は、事実上、Bらが上記市場で事業活動を行うことを困難にする。
(2)ア 目的が正当であり、手段が相当であれば、行為の違法性が阻却され、「現在又は将来の事業者の数を制限すること」に当たらない。
イ 上記否決の理由は、①他の事業者の顧客を低料金を提示して奪おうとする者であること及び②生活環境の保全と公衆環境の向上に配慮した事業活動を行うことができないことである。
①は、競争制限的であり、目的が不当である。
②は、A県民の健康維持を図る目的であり、正当な目的である。しかし、Bらが、これまでに不良な保守点検を行ったとしてA県知事から行政指導や行政処分を受けたことはない。そうすると、Bらは保守点検能力を有する業者といえ、上記否決という手段は関連性を欠く。よって、手段の相当性を欠く。
したがって、「将来の事業者の数を制限すること」に当たる。
5 以上より、上記否決行為は、8条3号に違反する。
(1195字)
公法系第1問
第1 規制①について
1 規制①は、高速路線バスのみを運行する自由を制約する。
2 職業は、生計維持という経済的価値及び分業社会における個性の発揮という人格的価値を有する。かかる職業の意義を実現するため、「職業選択の自由」(22条1項)は、職業活動の自由の保障も含む。
職業の経済的価値からすると、職業を選択するに際し、収益性が重視される。生活路線バス事業の大半が赤字である。そうすると、高速バス事業で得た収益を生活路線バス事業で食いつぶすくらいなら、バス事業を選択しないと考えられる。よって、規制①は、職業選択の自由に対する制約である。
規制①は、生活路線バスへの新規参入は、既存の生活路線バスを運行する乗合バス事業者の経営の安定を害さない場合に限り認めるという規制を含む。生活路線バス事業の大半が赤字であることからすると、そもそも既存の生活路線バスを運行する乗合バス事業者の経営を脅かさずに参入できる地域があるのか疑問である。そうすると、かかる規制は、個人の能力を超える。
そこで、目的が重要であり、手段に実質的関連性がある場合に合憲となる。
これに対し、規制①は、生活路線バスを運行する乗合バス事業者の収益を改善するという積極目的規制であり、より緩やかな基準が妥当するという見解が考えられる。しかし、積極目的規制の場合に緩やかな基準が妥当する根拠は、民主制の過程で積極目的規制が採用された以上、裁判所はその判断を尊重すべき点にある。法律案では、上記積極目的が目的規定に掲げられておらず、議会で積極目的が採用されるとはいえない。よって、上記見解は不当である。
3 規制①の目的は、公共交通の維持・拡充である。生活路線バスは、高齢者や高校生等にとって不可欠な移動手段である。そうすると、生活路線バスは、高齢者の生活物資の買い出しや、高校生の学習の機会確保に不可欠である。よって、上記目的は重要である。
しかし、上記目的を達成するためには、生活路線バス事業者に補助金を支出するという、より制限的でない他の手段がある。よって、手段に実質的関連性がない。したがって、規制①は22条1項に違反し違憲である。
第2 規制②について
1 規制②は、特定区域に自家用車で移動する自由を制約する。
2 人格的生存に不可欠な権利自由が、「幸福追求」「権」として13条後段により保障される。自家用車は、いつどこにでも移動できる。そして、特定区域は、都市部や観光地が想定されている。かかる区域にいつどこにでも移動できることは、広く知見を広めることができ、人格的生存に不可欠である。よって、上記自由は幸福追求権として保障される。
3 法律案では、規制②に違反した場合、5000円以下の過料に処せられる。これは、5000円という高額の通行料を課すに等しく、いつどこにでも移動できるという自家用車の効用を失わせる強度の規制である。
そこで、目的が重要であり、手段に実質的関連性がある場合に合憲となる。
4 規制②の目的は、交通渋滞の緩和を図る点にある。大都市の一部区域や一部の観光地における交通渋滞が、住民生活に著しい支障を来す程度に達している。これは、交通事故や緊急車両の通行困難による住民の生命身体に対する危険である。よって、上記目的は重要である。
規制の広さは、最大でも混雑がひどい数㎢に限られる。時間帯は、観光地では週末や休日の午前9時から午後5時くらいを、住宅密集地では通勤・通学の時間帯を想定している。そうすると、住民の生命身体に対する危険防止に必要な範囲に限定されており、手段に実質的関連性がある。
これに対し、渋滞の原因は観光バス等にもあるから自家用車のみ規制してもあまり意味がないという見解もある。しかし、自家用車が渋滞の一因となっていることは確かである。よって、かかる見解は不当である。
したがって、規制②は合憲である。
(1581字)
公法系第2問
第1 設問1(1)
抗告訴訟の対象となる処分とは、公権力の主体たる国又は公共団体の行為のうち、その行為により直接国民の権利義務を形成し、又はその範囲を確定することが法律上認められているものをいう。
1 農用地区域を定める計画自体の法的性格
同計画の根拠規定は、農振法8条1項である。そして、同条2項は、同計画に農用地区域を定めるものとする。同計画の設定により、区域内の農地所有者は、農地の転用が認められなくなる(17条、農地法4条6項1号イ)。よって、同計画は、直接的法効果性を有する。また、同計画は、農振法8条1項に基づき、行政庁が一方的に定めるものであり、公権力性を有する。よって、同計画は処分に当たる。
2 個別の農地を農用地区域から除外するための計画変更の処分性
同計画変更により、農地の転用が認められないという法効果が消滅する。よって、直接的法効果性を有する。また、同計画変更は、農振法13条2項に基づき、行政庁が一方的に行うものであり、公権力性も有する。よって、同計画変更は処分に当たる。
3 本件計画の変更の申出の拒絶の処分性
農振法13条2項は、国民の申請権を規定していない。そうすると、行政庁に応答義務がない。同項は、職権による計画変更を前提とするものである。同申出の拒絶は、事実上の行為にすぎず、同項に基づくものではない。よって、公権力性が認められず、同申出の拒絶は処分に当たらない。本件運用指針は農振法に基づくものではなく、行政規則である。よって、その存在は、上記結論に影響しない。
第2 設問1(2)
1 本件計画の変更の申出の拒絶が処分であることを前提とすると、農振法13条2項が国民の申請権を認めていることになる。そこで、Xは、不作為の違法確認の訴え(行訴法3条5項)を提起すべきである。
2 訴訟要件の充足性
(1) 上述のように、「法律に基づく申請」を充たす。
(2)ア 本件申出書の返送は、行政指導に当たる。行政指導が行われている間は「相当の期間」は進行しない。しかし、相手方が行政指導に従わない意思を真摯かつ明確に表示した場合は、それ以降、「相当の期間」の進行が開始する。
イ Xは、5月10日に申出をやめる意思がない旨を職員に伝えており、行政指導に従わない意思を真摯かつ明確に表示した。ところが、翌令和2年5月中旬になってもB市から通知がされておらず、「相当の期間」が経過した。
(3) よって、訴訟要件を充足する。
3 本案においてすべき主張
B市は、Xと同時期にB市に申出をした他の農地所有者らに対しては既に令和2年4月中に通知したのに対し、Xに対して通知しておらず、平等原則に反し、違法である。
第3 設問2
1(1) 本件計画の目的は、農業の健全な発展を図る点にある。そこで、農業の発展に資さない場合は計画を変更すべきである。
(2) 本件事業によって、関係する農地の生産性が向上するとは考えにくく、本件農地もその恩恵を受けない。よって、上記場合に当たり、計画を変更すべきである。
2(1) 本件農地と関連する部分の工事が先に完了している場合には、農振法施行令9条を一律に適用すべきでない。
(2) 同部分の工事は平成20年に完了しており、同条を一律に適用すべきでない。
(1320字)
※設問2の再現は、記憶が曖昧なため不正確です。