(続)過去問ひとり答練 旧司H11刑訴第2問 | ついたてのブログ

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第1 訴因変更の要否

訴因は審判対象画定機能と防御権告知機能を有するが、第一次的機能は前者にあり、後者はその裏返しにすぎない。そこで、審判対象画定のために不可欠な事実が変動した場合、訴因変更が必要である。

本件では、甲が単独で強盗したとして起訴されたのに対し、裁判所は乙との共謀の心証を択一的に形成した。共謀の事実は審判対象画定のために不可欠な事実に当たる。よって、訴因変更手続を経ないで同事実を認定することはできない。

第2 択一的認定

1 「被告事件」(333条1項)とは、訴因、すなわち、審判対象画定のために不可欠な事実をいう。

本件では、裁判所は乙との共謀を択一的に認定しようとしているが、乙との共謀は上述のように審判対象画定のために不可欠な事実である。よって、乙との共謀は「被告事件」に当たる。

2 「犯罪の証明」(同項)があったといえるためには、利益原則(336条)より、合理的な疑いを超える程度に検察官が証明しなければならない。

本件では、乙との共謀を否定する乙の供述も虚偽とは言い難いと裁判所は判断している。よって、乙との共謀は上記程度に証明されていない。したがって、乙との共謀の「証明」があったとはいえず、本件認定をすることは許されない。

第3 以上より、裁判所が本件有罪判決を言い渡すことはできない。

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