第1 設問1
1 本件条例は、市職員の採用について、日本国籍を有するか否かで区別している。
2 「平等」(14条1項)とは、各人の事実的差異に応じた合理的区別を許容する相対的平等をいう。
3 区別取扱いが合理的であるか否かの判断基準
区別取扱いを受けている対象は、市職員の採用資格者となる利益である。同利益は、参政権としての機能を有する。そこで、同利益は、15条1項により保障される。そして、市議会議員の選挙権(同項)が、国民主権(1条)と直接関係することから、権利の性質上、外国人には保障されないのと異なり、市職員の採用資格者となる利益は、市職員には様々な職種が含まれるから、国民主権と直接関係するとはいえず、権利の性質上、外国人にも保障される。
また、国籍による区別は、個人の能力とは関係しない事由による区別である。
そこで、区別の目的の重要性及び手段の関連性・必要性を有する場合にはじめて合憲となる。
4 区別の目的は、人事の適正な運用であり、重要である。
しかし、市議会議員の場合、いったん選出されると条例制定などの公権力行使にかかわるのと異なり、市職員には様々な職種が含まれるから、公権力行使にかかわらない職種に外国人を任用すれば、国民主権に抵触することなく人事の適正な運用を実現できる。よって、市職員の採用から日本国籍を有しない者を一律に排除するという手段は、関連性を欠き、14条1項に違反する。
第2 設問2
1 A市側の反論
採用した外国人を、公権力行使にかかわらない職種に任用しなければならないことになると、全体としての人事の流動性を害し、人事の適正な運用を実現できない。よって、市職員の採用から日本国籍を有しない者を一律に排除するという手段は、関連性を有する。
2 私見
(1) 本件条例は、市職員の採用について、日本国籍を有するか否かで区別しており、同区別は、区別の目的の重要性及び手段の関連性・必要性を有する場合にはじめて合憲となる。
(2) 区別の目的は、人事の適正な運用であり、重要である。
(3) 手段の関連性について
A市側は、人事の流動性を強調する。しかし、採用する市職員全体の中で日本国籍を有しない者は多くないと考えられる。そうすると、公権力行使にかかわらない職種に外国人を任用することによって、全体としての人事の流動性を害するとまではいえない。市職員には様々な職種が含まれるから、公権力行使にかかわらない職種に外国人を任用すれば、国民主権に抵触することなく人事の適正な運用を実現できる。よって、市職員の採用から日本国籍を有しない者を一律に排除するという手段は、関連性を欠き、14条1項に違反する。
(1090字)
※比較のポイント(ひでぽん氏):
・両者の共通項=参政権的意義を有する人権/15条1項によって保障される人権(争いあり)
→外国人には、国民主権との関係で、保障の可否が問題となる人権
・両者の相違点=国民主権(前文・1条)との関係が異なる
→選挙権は国民主権を正に具現化する権利
公務就任権は、職種が幅広く、必ずしも国民主権に直結しない場合もある
→ここが両者の比較のポイント
↓
更に両者は、国家レベルでなく、地方自治レベルのだということも一つのポイント
→国民主権を厳格に貫く必要は必ずしもない
※外国人の選挙権についての判例(許容説)、あるいは、公務就任権についての高裁判決や最高裁判例については、どこまで触れるべきなのか迷うところである。思うに、本問では選挙権については比較の対象に過ぎないし、管理職就任について問題となった東京都の事件と異なり、本問では広義の公務就任権が問題となっているので、大展開は危険である。加点事由であると考える。触れる場合も、全体の流れを損なわないように気をつけて論じるべきであろう(ひでぽん氏)。
※第1.1:(判例の事案について)原告の不服の本質は外国人であるがゆえに管理職試験から一律排除されているという被差別感情にあるのだから14条1項違反で構成するべきである(びょうそく氏)。
※第1.3:公務就任権は、公権力によってその地位を創設してもらわないことには始まらない。憲法22条1項の職業の自由としてこれを構成するのは難しいだろう。やはり憲法15条・・・によって、ある種の制度的権利として構成する方が適切であろう(「転回」P.301)。