(続)過去問ひとり答練 旧司H18刑法第2問 | ついたてのブログ

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弁護士一年目です。ついたての陰から近況をつづります。

第1 甲の罪責

1 名義人Bのクレジットカードを呈示してパソコンの購入を申し込んだ行為に、①Xに対する1項詐欺未遂罪(250条、246条1項)が成立しないか。

(1) 「欺」く行為とは、交付の判断の基礎となる重要な事項を偽ることをいう。

本件では、Y店は、カードの利用者が名義人本人であることを確認する義務を信販会社に対して信義則上負い、同義務に違反した場合には信販会社から立替払いを受けられない可能性がある。よって、カードの利用者が名義人本人であるか否かは、Y店にとって商品を交付するか否かを判断する基礎となる重要な事項である。甲の上記行為は、自己が名義人本人であるとの黙示の意思表示を包含する挙動による「欺」く行為に当たる。

(2) 乙は、甲がBとは別人であることに気付いており、錯誤に陥っていない。

(3)   よって、①の罪が成立する。

2 B名義で売上票に署名した行為に、②有印私文書偽造罪(159条1項)が成立しないか。

(1) 売上票は、商品を売り上げたという実社会生活に交渉を有する事項を証明するに足りる文書であり、「事実証明に関する文書」に当たる。

(2) 「偽造」とは、名義人と作成者の人格の同一性を偽ることをいう。

本件では、名義人はBであり、作成者は甲であり、人格の同一性を偽っており、同行為は「偽造」に当たる。

(3)   甲に「行使の目的」がある。

(4)   B名義で署名しており、有印である。

(5)   よって、②の罪が成立する。

3 同売上票を乙に渡した行為は「行使」に当たり、③同行使罪(161条1項)が成立する。

4 以上より、①②③の罪が成立し、牽連犯(54条1項後段)となる。

第2 乙の罪責

1 パソコンを甲に引き渡した行為に、④Xに対する業務上横領罪(253条)が成立しないか。

(1) 乙は店長として継続的にXから委託を受けてX所有の商品を管理している。よって、同パソコンは「業務上自己の占有する他人の物」に当たる。

(2) 「横領」とは、委託の任務に背いてその物につき権限がないのにその物の経済的用法に従って所有者でなければできないような処分をする意思を発現する一切の行為をいう。

本件では、乙は低迷しているY店の販売実績を上げる意思を併有しており、委託の任務に背いていないとも思える。しかし、カードの不正利用に気付いた場合には、店の信用維持のために取引を拒絶するのが委託の任務といえる。また、乙はパソコン販売により店長としての地位を保つ意思もあり、パソコン販売による効用を享受する意思がある。よって、上記行為は、上記意思を発現する行為といえ、「横領」に当たる。

(3)   したがって、④の罪が成立する。

2 同売上票をCに送付した行為は「行使」に当たり、⑤偽造私文書行使罪(161条1項)が成立する。

3 代金の立替払を請求した行為に、⑥A社に対する1項詐欺罪が成立しないか。

(1)   「欺」く行為

カードを使用する正当な権限のない者に対する売上げか否かは、債権回収の可能性に影響する事項であるから、信販会社が立替払いに応じるか否かの判断の基礎となる重要な事項に当たる。そして、上記行為は、カードを使用する正当な権限のある者に対する売上げであるとの黙示の意思表示を包含する挙動による「欺」く行為に当たる。

(2) 誤信したCが30万円を振り込むという交付行為を行った。

(3)  よって、⑥の罪が成立する。

4 以上より、④⑤⑥の罪が成立する。そして、⑤と⑥は牽連犯となり、④と併合罪(45条前段)となる。

(1419字)

 

※第1.1(1):三角詐欺についても書く場合:「「欺」く行為の相手方

上記行為の相手方は乙であり、被害者はXである。このように、被偽もう者と被害者とが異なる場合、被偽もう者には、被害者の財産を処分する権限がなければならない。

本件では、乙はXが経営するY店の店長であり、商品たるパソコンを処分する権限を有する。よって、上記行為は「欺」く行為に当たる。」