(続)過去問ひとり答練 旧司H15民訴第2問 | ついたてのブログ

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第1 1の場合

1 (1)について

乙の訴えは、甲の訴えの請求原因と同一の売買契約に基づく代金支払請求権を訴訟物とする。よって、乙の訴えは、「本訴の目的である請求・・・と関連する請求を目的とする場合」(146条1項柱書)に当たる。そして、本訴たる甲の訴えは「係属」(同柱書)中である。よって、乙の訴えは、反訴として提起できる。

訴訟の開始及び審判の対象・範囲に関する決定は当事者に委ねられる(処分権主義)。よって、反訴として提起できるとしても別訴を提起することは許される。したがって、甲の主張は正当でない。

2 (2)について

(1) 同時履行の抗弁権(民法533条)は、権利抗弁である。よって、裁判所が引換給付判決をするためには、当事者から同抗弁権を行使する旨の権利主張がされることを要する。

(2) 判決事項は当事者の申立事項と一致しなければならない(246条)。同条は、処分権主義に基づく。そして、同条は、被告に対して攻撃防御の対象を明示し不意打ちを防止するという機能を有する。そこで、①当事者の合理的意思に反せず、かつ、②被告に不意打ちとならない場合には、一部認容判決が許容される。

ア 甲の請求について

甲は、代金支払と引換えであっても絵画の引渡しを受けることを望む。また、甲は、代金500万円という自認額より増額された700万円の支払をしてでも絵画の引渡しを受けることを望む。よって、①を充たす。他方、乙は、同抗弁権を主張した結果、引換給付判決を得ている。また、乙は、代金1000万円という自己の主張より減額されてはいるが、甲の自認する500万円よりは増額されているのだから自己の主張が一定程度認められている。よって、乙に不意打ちとはならない(②)。

イ 乙の請求について

乙は、絵画引渡しと引換えであっても代金の支払いを受けることを望む。また、乙は、代金1000万円という自己の主張より減額された700万円であっても支払いを受けることを望む。よって、①を充たす。他方、甲は、同抗弁権を主張した結果、引換給付判決を得ている。また、甲は、代金500万円という自認額より増額されてはいるが、乙の主張する1000万円よりは減額されているのだから、自己の主張が一定程度認められている。よって、甲に不意打ちとはならない(②)。

ウ したがって、裁判所は本件各一部認容判決をすることができる。

第2 2の場合

1 本件判決の確定により、甲の乙に対する絵画引渡請求権の存在の判断に既判力が生じる(114条1項)。「500万円の支払いを受けるのと引換えに」という判断は、訴訟物たる権利義務関係の存否についての判断ではないから「主文に包含するもの」(同項)に当たらず、既判力は生じない。よって、乙が代金額が1000万円であると主張することは既判力によって遮断されない。したがって、乙は同主張をしてその支払いを求めて訴えを提起することができる。

2 もっとも、甲の乙に対する訴訟の審理において、代金額について、当事者の攻撃防御が尽くされていた場合には、乙の同主張は紛争をむし返すものであり、信義則(2条)上遮断される。よって、同場合には、乙は同訴えを提起することはできるが、同主張は遮断される。

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