第1 Cが無資力でない場合
1 Eの主張
AのBに対する貸金債権(被担保債権)は、支払期限から10年が経過したので時効が完成した(167条1項)。そこで、Eは時効を援用し、被担保債権が時効消滅した。そして、付従性により、Aの抵当権も消滅した。
2 Aの反論
後順位抵当権者Eは「当事者」(145条)に当たらず時効を援用できない。
3 考察
「当事者」とは、時効により直接利益を受ける者をいう。
本件では、Aの1200万円の被担保債権が時効消滅すると、Eの抵当権の順位が第2順位に上昇し、Eの1500万円の被担保債権に対する配当額が、300万円から1500万円に増加する。しかし、同増加に対する期待は、抵当権の順位の上昇によってもたらされる反射的利益にすぎない。よって、Eは、時効により直接利益を受ける者ではなく、「当事者」に当たらない。したがって、同反論は認められない。
第2 Cが無資力である場合
1 Eの主張
EはCに貸金債権を有しており、被保全債権を有する。また、Cは無資力である。そして、上述のように、Aの被担保債権につき時効が完成しており、Cの時効援用権をEが代位行使する(423条1項)。よって、Aの被担保債権は時効消滅し、付従性によりAの抵当権も消滅した。
2 Aの反論
①Cが承認しており、時効は中断するので時効が完成していない(147条3号、157条1項)。②物上保証人Cは「当事者」(145条)に当たらず時効を援用できない。③時効援用権は一身専属権であり、代位行使できない(423条1項但書)。④Cの時効援用は信義則(1条2項)に反するので、Eによる代位行使は認められない。
3 考察
(1) ①について
「承認」を中断事由とした147条3号の趣旨は、承認により権利の存在が明確になった点にある。債務を負担しない物上保証人が債権の存在を認めても、債権の存在が明確化したとはいえない。よって、物上保証人は「承認」できない。
本件では、物上保証人Cが、Aに対してBに代わって弁済したことや残債務も代弁済することを申し出たことは、「承認」に当たらない。よって、①の反論は認められない。
(2) ②について
物上保証人は、時効により抵当権の負担を免れるので、時効により直接利益を受ける者であり、「当事者」に当たる。よって、②の反論も認められない。
(3) ③について
時効により利益を受けることを潔しとしないという債務者の意思よりも、被保全債権を保全するという債権者の利益の方が保護に値する。よって、時効援用権は一身専属権に当たらない。したがって、③の反論も認められない。
(4) ④について
たしかに、Bの父親Cが上述のようにAの被担保債権の存在を認めている。上述のように、Cの行為は「承認」には当たらないが、息子Bの債務をCが代わって支払ってくれるとAは信じている。Cが時効援用することはAの同信頼を害するものとして信義則に反し許されないとも思える。
しかし、Aが中断(147条1号2号)の措置を採ることは容易である。それにもかかわらず、Aが中断の措置を採らなかったことは、Aの落ち度であり、Aの同信頼は保護に値しない。よって、Cの時効援用は信義則に反しない。したがって、④の反論も認められない。
(1321字)
※第2.2.①:第1では書かない。なぜなら、仮にCの同承認が147条3号に当たるとしても、時効中断の相対効(148条)により、時効中断効がEに及ばないからである(私見)。
※第2。3(4):父親たる物上保証人が、息子の残債務の代弁済を申し出ていることから、Aは、Cが残債務の代弁済をしてくれるであろうこと及びCが時効援用しないであろうことについて、Cが単なる単なる物上保証人である場合よりも、強く信頼していると考えられる。同信頼を保護すべきではないかという問題意識を示す(菅野氏)。